洒落怖
色街

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959 946 sage 2007/05/08(火) 00:05:43 ID:T7g4Ut760
放心状態の彼女の両親、その場のあまりに重たい空気に耐えられず私は友人に付き添われて、タバコを吸いに待合室に向かった。
廊下で看護婦とすれ違った。
すれ違いざま、その看護婦がニヤッと哂ったように見えた。
2、3m進んだ所で私はハッとした。・・・今の看護婦、あの女だ!
すぐに振り返ったが、もうそこには看護婦はいなかった。

彼女の49日が過ぎてしばらくして私は元カノに呼び出された。
待ち合わせ場所に行くと予想はしていたが、やはり彼女の母親が待っていた。
私は流されるように、彼女らに全てを委ねた。

960 946 sage 2007/05/08(火) 00:06:24 ID:T7g4Ut760
それから数年、私は仕事で上京。
宿泊先のホテルから近い事もあり例の元売春街に足を運んだ。
夜桜でもと思ったが川沿いの桜はもう散ってしまっていた。
街は様変わりしていた。200店以上在ったという「売春宿」の半分くらいが取り壊されて剣道場?やコインパーキングになっていた。
川の上では何やら規模の大きい工事をしており、川沿いの道は綺麗に整備されていた。
メイン通りの真ん中のガード下には仮設交番があった。
裏通りには古ぼけた地蔵があった。
なんとなく手を合わせているとかなり年を食った婆さんに声を掛けられた。
婆さんの飲み屋は私の上がった店の2軒隣にあった。
店の中には客らしい片腕の小汚い爺さんが1人いるだけだった。
婆さんに勧められるまま私はかなりの量のビールを飲んだ。
酔いのせいだろうか、私はそれまでの出来事を話した。
婆さんは「そういうこともあるさね。この街で命を落とした女は沢山いるからね。
薬の打ちすぎで部屋で冷たくなってた女。逃げ出そうとして見せしめに殺された女。店の中で客に滅多刺しにされて死んだ女。あんたの言ってた店では確かガード下にまだ店があった頃に客に惚れた娘が散々貢がされた挙句に捨てられて
首を括って死んでた事があったよ。ここはそういう女の恨みの詰まった土地だよ。
全部ぶっ壊して更地にしたって消えやしないよ」と忌々しそうに語った。

後数年もすれば、あの街は跡形もなくなって、ああいう場所だった事も忘れ去られるのだろう。
あの街の「怨念」も人々の記憶と共に消え去るのだろうか。
私があの街に足を運ぶ事もないだろう。
私は酔いで重くなった足を引きずりながら今は無き色街を後にした。

おわり

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