洒落怖
復讐

この怖い話は約 4 分で読めます。

彼は庭に入ってくると、私の目の前で長い袋の紐をといた。
そして私を見るなりにっこり笑い、「よかった」と私に告げた。
刀の柄が袋の端からのぞいた。どういうことかと聞いた。
「君のママが、僕のママに全部話してたんだ。君が、凄く心配してたよって、桃組の頃から」
桃組というのは小学校4 5 6のクラスだ。
「でも、ごめんね、ずっと待ってたんだ。あいつらが全員、立派に大人になるのを。
それを見て喜ぶあいつの目の前で全員ころして、それからあいつの節々一本づつ切り落とす。
君にだけは見られたくないから、帰って。」
彼は、うつむいて涙を流した。
「よかった、君をどうやって外に連れ出そうか、困ってたんだ。
やだやだやだやだ見られたくない。」
膝が震えてその場に私は崩れ落ちた。
彼は一部だけ正気をもっていたんだとこの時気づいた。
私に、今のような自分の姿を見られるのを恥じている彼は、自分の罪深さを理解していた。
それでもやめられないから苦しいんだろう、渋面は間違いなく苦悩をかかえた人間のものだった。
防具袋を下ろした彼がその紐を解くと、短刀の柄も沢山みえてきた。
彼は私以外、あの時のクラスメイトと担任全員殺すつもりとしか思えない。
なんでそんなにと聞いた。担任ならわかるけど。
「あいつらいきなり、僕に味方したろ。許せない。それまで笑ってみてたくせに。」
彼の想いは理解できた。
でも、彼がやろうとしている事があまりに凄惨でいけないことだ。

647 642 sage 2008/01/03(木) 11:57:09 ID:Wl3hyzG/0
私は竦んで硬直した身を奮い起こして立ち上がり、とおせんぼした。
彼は、寂しそうにうつむき、私をおしのけようとした。
彼のハンディキャップを考えれば信じられないほどの力だった。
並の成人男性が本気でどのくらいの力がでるのか、味わった事はないが。
多分それ以上にはあったんじゃなかろうか。
「私が全部払ってあげるから、やめて。」
私は思わずそういった。
「なんで?君を殺す理由ないよ。愛してるんだ。」
狂人の口から愛してるなんて言葉をきくとはおもわなかった。
でも、彼にとっては小学生の頃、勇気が出せなかった唯一の味方でも、たった一人の大事な想い人になりえたのだろう。
「私、結婚してる。でも〇〇君のなら、子供を生んであげる。
あなたの大切な子供を、あなたの分まで幸せにしてみせるから。」
愛してると言う言葉が本当なら、私はこの言葉にかけた。
彼は両手で自分の頭をがんがん叩きはじめた。
それから頬につめをたててざりりと嫌な音を立て、爪が皮膚にもぐりこみ、血が伝いだした。
「変だな。起きない。」
彼の異常が目立ちだした、まるで子供のような直情な仕草だ。
「もう休んでもいいじゃない。私が働いてあげるから、主夫になってよ。ね?」
思いつく限りの言葉を並べ立てて気をひこうとする。
とうとう彼は刀を抜き。尖端を自分太股にぐさりとつきたてて。
「おっかしいなあ」
と言い出した。
小さな頃の、ハンディキャップをせおって身体を満足に動かせなかった彼は、そこにいなかった。
心の中に生まれた憎悪の炎、たぶんそれをずっと燃やし続けて、他の人より何百倍も努力したのに違いない。
人を殺すのに十分、彼は刀を扱えていた。
あまりに哀れである。こんなになるまで誰一人彼にイジメたことを謝らなかったのだ。
復讐されるその寸前まで、そして今も、私の後ろの建物の中で自分は善良な市民を装っていたのだ。
生徒をやつあたりで負傷させ、イジメたその教師との歓談に耽りながら。
思わずかけよって刀を抜かせると。流れた血がズボンにしみてゆくのを必死に手で押さえた。
「離婚して、あなたと再婚する。」

この怖い話にコメントする

  • 匿名 より:

    登場人物全員糞やんw

  • 復讐