洒落怖
夜の会社

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……コン。
乾いた音がした。小さな音。
コン、コン、コン。
暗い部屋の奥の方で、何かを叩く音がする。
左から右へ。
最初は何の音か分からなかった。音は順に移動していた。
部屋の端まで行って、音は折り返す。
右から左へ。
さっきより音が近くなっている。これは。

パーテーションを叩いている!
姿は見えない。生身の誰かの悪戯ではない。

…ならば別にいいか。

松岡は鷹揚だった。
京都で生まれ育ち、ばーちゃんから色々仕込まれ、母親も霊感持ちだったので、
基本的に「そういうもの」には構わない質なのだ。
怖かったり不快だったりするが、関わり合いにならなければ、大抵の場合実害はない。
それなら、今は目前の〆切の方が遥かに重要だ。
暗がりでコツコツと音が廻るのを放置して、松岡は仕事に戻った。

969 夜の会社4/4 ◆BxZntdZHxQ sage 2008/07/18(金) 00:27:20 ID:DWlnez5f0
イヤホンから流れる音楽の狭間に聞こえるノックの音は、二曲ばかりのうちに止んだ。
(姿も見せられない癖に…根性のないヤツだ。)
松岡はふっと息を吐いた。
その瞬間。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッッ!!

轟音と共に、目の前のパーテーションが揺れた。
薄明かりの中、松岡の部署のパーテーションと言うパーテーション、
全てが一斉に打鳴らされている!
あまりの大音響に、流石の松岡も「ひっ」と息を飲んだ。
すると、音はピタリと止んだ。

松岡は薄ら寒いものを感じて、やりかけの作業を保存してパソコンの電源を切った。
そのまま急いで会社を出て、以来暫くはなるべく人のいる内に退社したそうだ。
社内ではたまにそんな事が起こるらしい。

俺は怖い。とてもじゃないが、俺ならそんな所で夜まで働けない。
そう言ったら、松岡は「ナオさん、自分の仕事を棚にあげてるねぇ。」と微笑した。
俺の仕事も殆ど夜中に動いている。
なるべくなら、一人で作業している時には思い出したくない。

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