洒落怖
失せもの探し

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当然としか俺には思えないんだよ。」
僕はどうしても理由が知りたかった。マスターが落ち着いているのも理解できなかった。
「あいつの弟子なら話しても怒らないだろうな。」
マスターは自分を納得させるように話し始めた。
「失せモノ探しは消えたと言われているし、信じられている。でもな、彼女は自ら姿を消しただけだ。
そして俺は彼女が死んだなんて噂すらあることも知っているが、彼女は死んじゃいない。」
そう言ってマスターは二階へ上がっていった。
Mさんはホットサンドを食べ終えていた。そこにいる理由はもうないのに、なぜか居座っていた。
「帰らなくていいんですか?」
「まだ私が宗教に誘うとでも思ってるの?ばっかじゃない。面白そうだからもう少し話を聞いてくことにする。」
マスターが降りてきた。写真の束を手にして。
マスターがテーブルにその束を無造作に置いた。よく見るとポストカードだった。
日本全国を渡り歩いているかのように、様々な観光地のポストカードがあった。
中には自分で撮影したと思われる写真の裏に文章を書いているだけのものもあった。
「読んでもいいですか?」
マスターはうなずいた。僕は一枚一枚、確かめるようにして書かれた文章を読んでいった。

しかし、それら全てが近況報告だった。文末には、失せモノ探し、とサインが必ずあった。
途中からそのサインが判子のようなものに変わっていた。それが私の生存証明とでも言うように。
「あいつは失せモノ探しを探しに行ったんだよ。」
僕はすっと理解した。何の説明もいらなかった。ただ理解したのだ。
そしてマスターはこんな話をしてくれた。

587 本当にあった怖い名無し 2009/09/10(木) 00:39:52 ID:eaVRGZ/P0
師匠の師匠が三回生の頃、その地区の著名な権力者から愛娘の捜索を頼まれたのだという。
もちろん彼女はそれを断った。人を探すことはできない、と。
しかし相手は絶望的だった。「全ての財産をあなたに差し上げてもいい。だからお願いする。」
結局彼女はその願いを聞き入れた。経費と日給だけもらうがそれ以上のものはいらないと言って。
しかし現実は悲惨なものだった。愛娘はとある山奥にある廃墟になったホテルの屋根裏で発見されたのだ。
そこは女の幽霊が出ると噂される心霊スポットだった。
同行した権力者は彼女と僕の師匠に言った。
「警察には絶対に届けないで欲しい。そしてこのことは全て忘れてくれ。
もし口外したら、君たちの命は保証できない。わかったな。」
結局その権力者の愛娘の死は事件にもならなかった。いや、死亡とすら認定されていないそうだ。
全てが闇の中に葬られたのだという。
その権力者の奥さんは愛娘の死を受け入れられず精神を病み、海外に強制的に移住させられ、
監視付きの豪邸で療養させられているという。

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