洒落怖
失せもの探し

この怖い話は約 3 分で読めます。

「純粋だったのね。」
自分で言うか?僕はそう思ったが口に出さずにいた。
それからしばらく宗教に関わってとんでもない目にあったことを聞きもしないのに勝手に語り始めた。
僕はうんざりしていた。Mさんにではない。他人にどんどん巻き込まれてしまう自分にだ。
「何よ。そんな顔して。」
また顔色を読まれてしまった。恋人にもあなたはすぐに顔に出す悪い癖があると言われていた。
イヤならイヤとはっきり言いなさい、と。
「退屈なの?まだ付き合ってもらうわよ。」と食べ物のメニューを見始めた。
「あ、ホットサンドがある。すみません、ホットサンド二つ。」
頼んでもいないのに僕の分までMさんは頼んだ。

585 本当にあった怖い名無し 2009/09/10(木) 00:35:36 ID:eaVRGZ/P0
ホットサンドを持ってきたマスターが言った。
「あんた、○○大の学生さん?」
「はい。もう卒業です。」
「そうかい。ここは○○大の学生のたまり場だったんだよ。最近はあっちの通りが栄えてるから
めっきり学生は減ってしまったけどね。」
「あの写真は○○大のものですか?」
「そうだよ。ここはあの大学のオカルト研究会?の会合場所だったんだ。おれは名誉会長なんだぜ。」
僕は驚いた。この喫茶店がオカルト研究会とつながっていたなんて・・・。
僕はホットサンドをむしゃむしゃと食べるMさんを尻目に、壁に貼り付けられた写真を確かめた。

いた。すぐに師匠は見つかった。隣には色気とは無縁の女性が立っていた。Aさんではなかった。
「あの、この人は?」
「ああ、失せもの探しだよ。」
失せもの探し?師匠がそんな風に呼ばれていたなんて初めて知った。
「僕の師匠なんです。この人のこと何か知ってたら聞かせてもらえませんか?」
僕とマスターの間に齟齬があったようだ。
「師匠って言うけど、彼女はあんたが入学する前には消えちゃってたはずだよ。」
彼女?
「こっちの男の人が僕の師匠です。」
「ああ、金魚のふんちゃんかい。しかしあいつが師匠とはなあ。」
「金魚のふんちゃん?」
「そう。あいつはいつも失せモノ探しを師匠と慕ってくっついていたんだ。金魚のふんみたいにな。」

僕は師匠の師匠の存在を知った。Mさんが僕を見る。そして、ホットサンドを指さし、
(これ食べていい?)というジェスチャーをした。僕はうなずき、マスターとの話を続けた。
「さっき消えたって言いましたよね?」
「失せモノ探しかい?ああ、彼女が消えてもう何年経ったかねえ。あれからオカルト研究会のみんなも
ここには集まらなくなった。あいつなんて、すぐそこに住んでるのに一度も顔を見せなかったよ。
で、あいつはどうしてるんだ?」
「消えました。」

586 本当にあった怖い名無し 2009/09/10(木) 00:37:47 ID:eaVRGZ/P0
マスターはまるでそれを予期していたかのように「そうか。やっぱりな。」とひとりごちた。
「何ですか?どうしてですか?何か知ってるんですか?」
僕は混乱していた。マスターはびっくりしたのか、僕を落ち着けようとし、コップ一杯の水を差しだした。
それを一気に飲み干した僕は「すみません。」と謝った。
「落ち着いたかい?まあ、俺も失せモノ探しが消えた時はびっくりしたからなあ。でも、あいつが消えたことは

この怖い話にコメントする

失せもの探し