洒落怖
失せもの探し

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ここまで話してマスターは沈黙し、カウンターの奥に入りコーヒーを入れ始めた。
僕たちは無言だった。Mさんすら無言を貫いていた。
そしてコーヒーを目の前に差し出され、僕たちは無言で飲み干した。

591 本当にあった怖い名無し 2009/09/10(木) 00:43:57 ID:eaVRGZ/P0
「そんな話して、大丈夫なんですか?」僕は黙っていられなかった。

「もう過去の話だ。その権力者と言われる人物も亡くなったしな。」
はたと気づいた。先月だか先々月、とある人物の盛大なお別れ会が某ホテルで開かれていた。
僕がたまたま彼女と結婚式の準備で訪れていたホテルだった。
因縁じみている。そう思った。これも師匠の仕業か・・・。

そしてマスターは一枚のポストカードを僕に差し出した。
「先週届いたんだ。」
四国のある県の住所が書かれていた。
「たぶん、その地に落ち着いたんだね。興味があったら会いに行ってみるといいよ。」

その晩、僕は四国への深夜バスの中にいた。一人で。
大きな橋を渡る頃になって目覚めた僕は携帯が光っていることに気がついた。
Kさんだった。
「行くんじゃない。」
メールにはそう打たれていた。あの人らしい。
しかしそれだけのはずがないと僕はページを送ってみた。
「お前は止めても行くだろう。なら一つだけ聞いて欲しいことがある。
四国にいる知り合いにタリスマンを預けてある。
それを先に受け取ってから行け。」
またスペースが続いた。
「死ぬなよ。絶対に。」

僕は涙が出てきた。ぽろぽろと自分の意志ではもう止められないほど号泣していた。

四国のとある駅に到着したのは早朝だった。
僕はバスを降り、近くにあるという温泉へ行き、一息ついてから
Kさんの知り合いと会うことにした。
仕事中なので、お昼休みに駅まで迎えに来てくれるそうだ。
知らない街をぶらぶらと歩きながら、師匠にまた会えるのかもしれないという期待が高まっていった。

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