洒落怖
豹変

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すぐに皆で最寄りの神社へ出向いたのですが、鳥居が視野に入った瞬間、Aの足がピタリと止まってしまいました。
途端にAは首を振り始め、「やっぱり行かない」と言い出したのです。
神社はもうすぐそこですから、ぼくらは皆で引っ張って連れて行こうとしました。
しかしAの足が地面に張り付いてしまったように、まったく前に進まなくなってしまいました。男3人が引っ張っても動かないのですよ?
押しても引いても岩のように動かないAに業を煮やし、ぼくらは神社に行くことを諦めました。
この時点では、どうしても神社に行かなくてはならないとまでは思っていなかったものですから。
仕方がないので近所で食事をして、カラオケに行ってA宅に帰り着きました。
カラオケでは、Aが突然、ビクンと席を立ったかと思うとすぐに腰掛けたりなど、おかしな行動が目立ちました。

そろそろ夜に差し掛かってきて、他の友人2人は帰ってしまいます。正直なところ、さすがにぼくは怖くなっていました。
生まれてこの方、幽霊など一度も信じたことがないぼくですが、これはヤバイのかもしれないと思い始めていたのです。
夜が更けるにつれて、Aはますます挙動不審になっていきました。Aが、突然固まってしまうのです。
移動している最中に固まり、何か作業している最中に固まり、不思議な格好で、時々固まってしまうのです。徐々に固まる時間は長くなっていきました。
終いには、あまりに長く固まり始めたので、ぼくはAを動かす方法を色々試してみました。

698 本当にあった怖い名無し sage 2009/09/04(金) 11:43:38 ID:MfsLtCHu0
すると、「ワッ!」などと大声を上げて活を入れてみると、Aはビクンとして、また元の動作に戻ることを発見したのです。
だからAが固まる度に、ぼくは活を入れ続けました。そんなことを幾たびも繰り返します。

Aとたった2人でアパートの室内に取り残されたぼくは、さすがに帰りたくなり、Aに帰宅したい旨を伝えました。
すると、Aの形相が変わり、Aは台所(といっても、アパートの台所ですから、玄関口と部屋の間にある狭い空間に備え付けられたボロいキッチンです)に素早く移動したのです。
そしてAはキッチンから矢庭に包丁を取り出し、仁王立ちの格好でぼくを見据えました。さらにAは、恐ろしい口調で言い放ったのです。
「3時に来るぞ……」

正直、何が3時に来るのかわかりません。まったく何が何だかわかりません。
しかしぼくは、全身に鳥肌が沸き立つ恐怖を感じました。
Aが立ちはだかっている場所は玄関口に続く場所ですから、部屋から出たくても出れないのです!

ぼくはAに再び大声で活を入れ、しきりに落ち着くように促すと、Aは静かに包丁をキッチンにしまいました。
しかし、その場を動いてくれません。どうやらぼくを、決して逃がすまいとしているようです。なんだかもう挙動まで怖い。
Aをあの手この手で説得したのですが、まったく様子が変わりません。
仕方なく備え付けてある電話を取って110番しようと思うと、Aは「無駄だ」と言います。
何が無駄なのかわからないのですが、電話を取ってみると、聞こえてくる音が「ツーツーツー」という音だけ。
これマジなんですよ。今から振り返れば、事前にAが電話の線を切っていたりしたのかもしれませんが、真相は不明です。
まさか何らかの超常現象によって電話が通じなくなったとまで思うことはできません。わかりません。

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