洒落怖
卒業式の後

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俺はその時Sさんに、大袈裟だけど一種の「気高さ」みたいなものさえ感じた。皆もそうだったのか、その後誰も
その事をネタにしたりする奴はいなかった。

700 5/7 sage 2009/07/26(日) 01:04:51 ID:b9hgz70f0
「椰子の実のヒトガタ」の姿が、いよいよはっきり確認出来る距離まで流されてくると、Sさんの顔は難しい顔から、
睨み付けるような険しい顔に変わっていた。
そう言えばSさんは神社か寺だかの娘だと、誰かが言っていたのをふと思い出した。
この時、何だか視野が突然狭まった気がしていた。でもそれは涙が乾いて、睫毛にくっついていたからだと思っていた。
(ああ、やっぱり人の形をしてるなぁ・・・・)
狭くなった視野でも見えるくらい近くまで来ると、ほんとに椰子の実の材質というか、色ツヤをしているのが分かった。
大きさは雛人形が一回り大きくなった程度だったと思う。頭があって、四肢にあたる突起がある。それが二体。本当に
人形のように見えた。
その椰子の実のような物を見ていると、急にSさんが大声で叫んだ。

「 こ っ ち に 来 る な ! 帰 れ っ っ ! ! ! 」
凄い声量だった。いきなりの出来事に海にずり落ちそうになるほど驚いた。にもかかわらず俺は不平を話し続けている。
そこでようやっと、自分自身に起きている異変に気付いた。
Sさんの気勢に押されるよう「椰子の実のヒトガタ」は二体とも元来たほうへ押し流され、やがて波に浚われ見えなく
なった。そこでようやく俺は話すのを止めていた、ということに気付いた。慌ててSさんの顔を見る。
「今の何!?俺どうかしてた?」
「最後の方、君の話しじゃなくなってたでしょ?」と言い、口を借りられたのね、と笑う。
「今の椰子の実みたいなやつに?アレは何だったの!?何であんな物が・・・・」
Sさんは考え込んだ。眉間にシワが寄って眉毛が八の字になった。どう言ったものか、そういう表情だった。
確か神社だ。寺じゃない。巫女さんだ。何故かその時思い出した。
そしてSさんは口を開いた。

702 6/7 sage 2009/07/26(日) 01:05:36 ID:b9hgz70f0
「アレは良くないモノなの。上手く説明できないけど、、、、、、、、」
Sさんはもどかしそうに眉を歪ます。
「今日は一生に一度の卒業式でしょ?君は最近特に疲れてたみたいだから、そういうのが重なって、、、、、、、、、
ほんとに上手く言えなくてごめんなさいなんだけど、ああいうモノが現れるとしたらそれはきっと一生に一度の日の、
例えば今日みたいな、卒業式のあとなんじゃないかな」
言い終わったSさんは心配そうな顔をしていた。そしてかすかに震えているのに気付いた。
その時は恐怖と興奮で頭が混乱し、詳しく問い質すことは出来なかった。でも頭のどこかで、何となくだけど、
「そんな事もあるかも知れないな」と不思議と腑に落ちていた。
恐怖でまともに頭が働いてなくて、何でもいいからとにかく納得したかった、てのもあるけどね。

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