寺・神社
八方園神社

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927 退職済みですが 2009/07/14(火) 15:52:53 ID:x0QB/pll0
「八方園神社 3/5」

石積みの最上部には「東京」やら「大阪」、「札幌」等の地名と、中心からその地名を繋ぐ直線が刻まれた石製の円盤が埋め込まれている。
「これは『方位盤』と呼ばれている。ここ、江田島を中心として日本全国の主要都市の方向を示している。
 ここが海軍兵学校だった頃、4号生徒(1年生)が故郷を想い、3号生徒(2年生)以上は肉親・親類縁者の訃報に接した時に故郷に祈った。
 当時は親族からみれば、兵学校生徒は『国に捧げたもので、自分の望みなど言えない』存在だから、親が亡くなっても「亡くなった」と知らせるだけだったんだな。
 先ほど、教官は『祀られる神がある訳でもなく』と言ったが、強いて言えば、この『方位盤にこめられた想い』が祀神なのかも知れぬ。」
 諸君も各自の故郷に向けて黙礼してみよ。」
教官の説明と指示に従い、各自黙礼する。
私の場合、そのものズバリの地名が載っているので楽だったが、「ここがこっちだから。。。」と戸惑う者、多数。
黙礼を終えると、先ほどまで感じていた違和感が薄らぎ、一歩の重さも多少軽くなったような気がした。

その後、我々は売店などがある「厚生館」、給与を受け取ったり各種申請を行う「庁舎」、これから術科教育を受ける「○○科講堂」、「教育参考館」などを巡り、解散した。
居住区に戻ると、同期のAが話しかけてきた。
「おい、今日の八方園神社、どうだった?」
彼によると、「半透明な白と黒のマーブル模様の壁のようなもの」が見えていたそうだ。白黒7:3位の比率で、模様が渦を巻くように動いていたらしい。
続けてA曰く。
「教育参考館でも似たようなモノが見えたんだけど。。。黒が強かったんだけど。。特に2階の立ち入り禁止の部屋のあたり。」
2階の立ち入り禁止の部屋、と言えば「海軍兵学校卒業者戦没者芳名室」。ドアに窓は付いているものの、カーテンで目隠しされていて内部を覗けなかった部屋である。
(実際に「海軍兵学校卒業者戦没者芳名室」は親類縁者が訪れた場合に、立ち入りが許可され献花等が行われる以外、特定職員以外立ち入り禁止です。)

928 退職済みですが 2009/07/14(火) 15:53:48 ID:x0QB/pll0
「八方園神社 4/5」

その後、教官から聞かされた「七不思議」の由来を調べているうちに、奇妙なことに気が付きました。
兵学校開校~終戦までの記述に「八方園『神社』」という記述が殆ど見当たらないのです。みんな「八方園」。
これって。。。もしかして。。。終戦後、アメリカから返還されて海自が使用するようになってから、何かが変質した?
少し背筋が寒くなりました。
「祀神は『方位盤にこめられた想い』などではなく『東郷平八郎元帥と海軍兵学校卒業の戦没者』、拝殿は『教育参考館』そのもの。。。」
つまり、靖国神社の極限定的な分院のようなものなのではないか、と。
そうだとすると、祀神が共感するような人間は此処には一人もいない事になる。。。

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