洒落怖
浄水器

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この話の途中、お茶を出してくれた、Aの母親も同席した。Aの母親は、息子の話を補足
するように、悩み相談とも、誰かに聞いてほしい身の上話ともいえるような話しをしてい
た。
自分も友人も、うんうんと聞いていただけだった気がする。しかし、ひと通りAの話しが
終わったところで、自分と友人は、
「水が悪いんじゃないか?商売も数十年来続いているし、土地が悪いということはなか
ろうが、水は流れも変わるし、溜まれば、その中に悪いものも溜め込むというし…。」
などと、アンチオカルトな部分のある自分だが、霊感商法よろしく、浄水器の話しに強引
に切り替えようとしていた。

だが、そんな自分たちよりも、Aの母親は一枚上手というか、何というか、
「自分たちも、そう思っている部分はあり、今度、知り合いから紹介してもらった拝み屋
を頼んである。家が上手くいっていない原因が、不可思議な何かのせいだと思っているわ
けではないが、そういったお祓いをすることによって、自分達の気が楽になるかもしれな
いし、あまり金の掛からない拝み屋を頼んである。」
と言い出した。しかし、あまりに、この親子のペースで話が続いては、自分と友人は、こ
こに何をしに来たのかわからなくなる。自分は、トークテクニックなどあったもんじゃな
しに、強引に浄水器の説明をしたと記憶している。最終的に、Aからも名刺を頂戴し、
「お祓いが終わったら、自宅用と事務所用。大型のものが安価ならば、豚舎にも浄水器を
置いてもいいかもしれない。」
と前向きな返答をもらい、その日は終わることとなった。

その、養豚業者への往訪から一日二日ほどして、Aから電話連絡があった。
「今度××日に、拝み屋に来てもらうことになった。ああいう話をしたこともあるし、ど
うせなら、あんたも同席しないか?俺が、あんなことを話したばかりに、あなたにも悪い
ものがうつっているかもしれないし。」
一瞬、(おいおい、縁起でもないな…)と思ったが、その頃は、浄水器マルチを本業とし
ており、暇が多かったこと。それと、オカルトに対して「半信奉者」だったこともあり、
(自分にも悪いものがうつっていたら嫌だな…)という、ちょっとした恐怖心と験担ぎで、
同席させてもらうことにした。
友人は、本業というか会社勤めもしていたが、ちょうどその日が休みであることと、そう
いった「お祓い」は、テレビの心霊特集番組くらいでしか見たことがなく、貴重な体験だ
から、ぜひとも同席するとのことだった。

その日がどんな天気だったかなどは記憶もしていない。たしか、友人が自分の家に来て、
そこから自分の車一台で、Aの家を目指した。Aの自宅兼事務所に到着したのは昼頃だっ
たと記憶している。
その日、Aの自宅兼事務所には、A、Aの妻、Aの母親、Aが雇っている男性(B)、自
分と友人が集まり、自分達から10分ほど遅れて拝み屋が到着した。
拝み屋は、還暦前後の女性で、自分の住む農村のどこにでもいるような「オバチャン」だ
った。夫?なのか、家族に見える男性に送迎され、拝み屋と、大きな荷物(祭壇や八足な
ど)を車から降ろしたら、どこかへ行ってしまった。

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