洒落怖
浄水器

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拝み屋を見送った後、従業員のBが
「Aさん、電話電話!」
と思い出したように口を開き、Aも、はっと思い出したように、Aの母親に
「そうだ、そうだ。さっき、拝んでもらってる時に仲町(なかまち 地名)から、電話が
あったそうだ。」
と話した。仲町というのは、Aの母親の実家であるらしい。Aの家族は、Aの母親の旧姓
や兄弟の名前で呼ぶのではなく「仲町」という地名で、隣の隣の町にあるAの母親の実家
のことを呼んでいた。
Aの母親は
「おや?何かあったかな?」
「電話は、オヤジさん(Aの母親の弟)か、息子の○○さん(Aの母親の甥、つまりAの
従兄弟)かはわからなかったが、『がのげ、四つ持ってきてけろ』って言ってたんですよ。」
と、Bが言うと、Aの母親は少し大きな声で、
「バカ言うな!そんな悪ふざけみたいなことで電話してきたのか?」
と、少し興奮気味で、冗談にもほどがあるとか、本気でそんなことを電話してきたのか、
などと家族同士で言っていた。

自分と友人は、(今日は浄水器の話しはできないかな)というのは、雰囲気で感じていた
ので、お互いに目配せをしてAの家を後にした。その後は、車の中で、
「契約は難しいかな?」
「いや、今日はもう、話せるタイミングではなかったし、仕方がない。日を置いて電話し
てみるわ。」
といった会話をして、その日は、自分の家でゲームをしたり、食事をした後に解散となっ
た。

Aに浄水器の件を話すのは、日を置いてと思っていながら一ヶ月近く経ったある日、たま
たまA宅の近くを通ったので、立ち寄ってみた。

Aは、
「忘れていたわけではなかったが、お祓いの効果なのか何なのか、お祓いの後から忙しく
なったので、連絡できずにいたのだ。」
と、説明してくれた。具体的には、Aの父親が精神病院から老人ホームに戻れたこと。A
の妻の病気もはっきりとし、簡単な手術をし、今後の入院の予定がなくなったこと。娘の
スキャンダルだが、娘の通う学校でもっと大きなスキャンダル(地方紙に掲載されるよう
な)があり、学校内の興味が娘ではないところに移ったため、学校に行くようになったと
のことだった。自分が聞かされた、悩みの種は軒並み解決したといったところだった。

「ただな…」
と、Aが語った後日談というのが不思議なこと。

お祓いの後。拝み屋が帰り、自分と友人が帰り。Aは、Bに促されたのもあり、Aの母親
の実家「仲町」に電話をしたのだそうだ。夕方くらいに電話をしたが、誰も出ない。その
後、何度か電話をし、夜の7時ぐらいに、やっとAの母親の甥であり、自分の従兄弟にあ
たる人物に電話がつながったのだという。
「昼間は申し訳なかった。取り込み中で電話を替われなかった。」
「ん?うん、どうした?」
「いや、昼間、電話をくれただろう。俺じゃなくて、母親に替わるか?」
「昼間の電話ってなんだ?」
「電話してきたんじゃないのか?俺も、ちょっと取り込み中で、うちの人夫が電話に出た
んだが。」
「いやいや、今日は昼間から山に入ってて、さっき帰ってきたばかりで、電話なんて掛け
られないぞ。」
「あれ?そうしたら、お前の親父さん(Aの母親の弟)かな?『がのげ』だか『まろげ』
っていうのを『四つ』用意してほしいって言われたんだが…」
「はぁ?バカ言え。なんでそんなこと言わなきゃならないんだ。お前、ふざけてるのか?」
「いやいや、ちょっと待て。母親も『がのげ持ってこいなんて、そんな電話する人間がど
こにいるんだ』って、興奮してたが、『がのげ』って何のことだよ?」

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