洒落怖
浄水器

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「いや、お前の地域でも言うだろ…『がのげ』つったら『がんおげ』、『棺桶』のことよ。
しかも、大昔の、仏様を屈んで入れる丸桶のことを、こっちのほう…うちの親父ぐらいの
年の人たちは『がのげ』とか『まろげ』(まるおけ が転訛した?)って言うんだよ。」
Aも、それには驚いて(それで、母親もそんなバカな頼みごと電話があるわけがない)と
興奮していたのかと思ったそうだ。Aは
「そうしたら、電話してきたのは親父さんでもないか…?」
と、尋ねると
「あ、○○さん(Aの母親)から聞いてなかったかな…、うちの親父この前から総合病院
に入院してるんだよ。それで、俺と妻が山仕事に行ったら、家には母親しかいないんだよ。」
と帰ってきたとのこと。Aは、それは失礼なことを、と謝りつつも、(おかしいなぁ。B
も間違えたり、変なこと言う人間じゃないしなぁ)と思ったそう。
その後、AとA母親で話したそうだが、丸い棺桶はもうAの母親(当時で70歳くらい?)
が、自分の祖母の葬儀の時に見た切りで、『がのげ』『まろげ』という言葉を使うのは、地
元の高齢者でも、ほとんどいないのではないか。また『四つ持ってこい』というのは、A
の母親の兄弟が4人兄弟なので、少し気味の悪いものを感じるといったことを話したそ
うだ。

そこで、拝み屋に再度お祓いを頼もうかと、拝み屋に電話をしたそうだが、拝み屋曰く
「多分だけどね、それは、お宅に憑いていたものが、祓われたくなくて、苦し紛れにした
イタズラだから。気にしなくていいですよ。○○さん(Aの母親)の実家を名乗ってたか
らといって、○○さんに何か憑いていたわけでもないですよ。」
と、軽やかに諭されたと。実際のところ、先に述べたように、家庭環境も良いほうに向か
っており、不思議な電話の後に何かが起きたりしたこともないそう。
最終的にAには、ウン十万円の浄水器を4台も購入してもらったので、お祓いに参加し
たことも含め、15年前と言えど記憶には残っている。友人は、お祓い後日談を「怖い」
と言いつつも、「抜け駆けしてA宅を訪問しやがってズルい、おごれ」と言われたりもした。

自分は今は、マルチからも足を洗い、住まいも変わり、家族を持ち、真っ当な仕事をして
いる。

なぜ、この幽霊も何も出てこない、不思議な電話だけの話しをここに書いたかというと、
この目のお盆で、実家に帰省した際に、Aの豚舎の近くを通って思い出したこと。そして、
一緒にマルチをしていた友人と飲みに行ったときに、A宅での不思議な話を思い出し、酒
の肴にしようとしたところ、友人がこの件を全く憶えていないという、新たな不思議に遭
遇してしまったからだ。
一緒に浄水器を売ってたあの頃のことは、黒歴史だよなぁ、お互い嫁さんには話せないよ
なぁ、という話では盛り上がったのだが、養豚業者Aを訪ねたことも、その後浄水器4台
成約になったことも、お祓いに参加したことも、お祓いの後日談がちょっと不思議だった
よなと話しても、友人は養豚業者Aのことは、まるで記憶にないという。
「隣町の、ここを通っていくと豚舎があるじゃん」
というと
「そこはわかる。その豚舎の先にある川で、春先に大きなヤマメを釣ったばかりだし。」
といった塩梅だった。

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