洒落怖
黄泉の世界

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142 本当にあった怖い名無し 2010/08/12(木) 21:03:08 ID:IU9fOyvJ0
「気づいたようだね。考古学関係者なら『ことどわたし考』を知らなきゃモグリってくらい有名な論文だ。
其の中で古代人が古墳の石室内を黄泉の国と捉えていたという可能性が述べられている。
この論文の骨子はこの事ではないけど、僕的にはこの論は賛成だよ。
君も石室の中に入ったのならば感じた筈だよ。石室内は人の世界ではないとさ」
そういってコーヒーをすする。僕の背には冷や汗がタラタラと流れ始めていた。
「加えてイザナギ、イザナミの黄泉の世界の神話だ。
記紀に記されているこの神話もこの話に説得力を持たせる。
イザナギはイザナミを閉じ込めるために岩で黄泉の世界に続く道を閉じるが、石室に入るための羨道も閉塞石という岩で塞がれている場合が多い。
また古墳内で食べ物を死者に捧げるなどの祭祀も行われていたようだ。これは黄泉戸契に通じるところがある。」
ここで修士さんはまたコーヒーを一口のみこう続けた。
「話をまとめるとさ。古代人は石室に続く羨道は黄泉に続く道、石室内は黄泉の世界。
本来、人が立ち入るべき世界じゃないんだよ。
神話にもあるように死者は生者が羨ましくて仕方ないんだよ。
だからイザナギを執拗に追いかけ回したんだ。だからこの写真でも、こんなにも手を伸ばして、こんなにも羨ましそうにしている。千五百年以上もご苦労な事だね。
でもまあ、僕らは学者志望だ。こんなもん無視すればいい。」
そして最後に自分の顔をじっと見つめてしゃべりだす。
「この世の世界じゃない風景が撮れるなんて面白いじゃないか。
黄泉の世界はどうだった。帰って来れて良かったね。あの手は確実に引っ張り込もうとしているよ。」
にやりと笑って修士さんは研究室の方に歩いていった。

143 本当にあった怖い名無し sage 2010/08/12(木) 21:04:45 ID:IU9fOyvJ0
古墳や遺跡、フィールドワークで遭遇した心霊現象はまだまだありますがそれはまたの機会にします。
修士さんとフィールドワークで遭遇した奴もありますし、ではまた会う時まで,ご精読ありがとうございます。

一つだけsage忘れたみたいです。誠に申し訳ありません

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