洒落怖
山小屋の女

この怖い話は約 3 分で読めます。

そこは、自分も初めて見る場所だった。
あれだけ密集していた藪が急に無くなり、湿った土の地面に、
ぽつぽつと木が等間隔で生えている場所。
それらの木には注連縄?がついており、その木々に囲まれるように、
朽ち果てた木造の小屋のようなものがぽつんと建っている。

257 3/7 sage New! 2011/10/01(土) 21:37:09.37 ID:BxN9IQCP0
それはどこの家にもある、物置小屋のように見えた。
俺はしばらく言葉を失い突っ立っていたが、

「―――……ょ」

またあの声が聞こえて、ハッと我に返った。
この先の小屋の方から聞こえた。間違いなく人の声だ。
確認しなければ……と思ったが、何か嫌な予感がした。

まず、ここは何だろう。
こんな場所、俺は知らない。今まで何度もこの山に登ったが、
こんな場所があるなんて聞いたこともなかった。
周りの木々で光が遮られているため薄暗く、どうにも不気味な感じがする。

「―――……ょ……」

それでも、聞こえてくる声は気のせいじゃない。
人がいるなら、確認しないと。
しかし大声を上げて呼びかける気にならず、息を潜めて、
足音を立てないように、静かに小屋へ近寄っていった。

……そうして小屋の前まで来て、俺は後悔した。
小屋には扉があったが、その扉にはボロボロになったお札らしきものが
びっしりと貼り付けられていた。
元は白かったのだろうが、遠目には茶色っぽく汚れていたそのお札が、
扉の色に溶け込んで見えなかったのだ。
扉には南京錠がついていたが、経年劣化によるものか壊れていて、
ぷらんとぶらさがっているような状態。
そのせいで扉が少し開いていて、隙間が出来ている。

258 4/7 sage New! 2011/10/01(土) 21:38:54.18 ID:BxN9IQCP0
「―――……ょー……」

声が中から聞こえた。
この時俺はもう泣きそうな心境だった。
普通に考えて怖い、あまりにホラーすぎる。ここから逃げたい。

その一方で、冷静な思考もあった。幽霊や怪物なんているわけがない。
浮浪者の類かもしれないが、山で迷ったか怪我でもした登山客が、
一時しのぎの仮宿としてここを使ってるとしたら。
そう、やはり確認くらいはしたほうがいいんじゃないか?……と。

どのくらい迷ったか、俺は後者の思考に従った。
扉に手をかける。
くいっと押すと、メキメキッ……と埃をボロボロ落としながら、扉が開いた。

中を覗き込むと…………人がいた。
こちらに背中を向けて、部屋の中心に立っている。
……女だ。
着物なのだろうが、まるでボロボロの白い布切れを纏ったような服装で、
頭はボサボサ、腰辺りまで伸びた白髪混じりの黒髪。
破れた着物の隙間から見える手足は、恐ろしいほどやせ細っていた。

その足元には、犬か狸か、動物の死骸が転がっていた。
まだ新しいのか、流れた赤黒い血が床を濡らしている。

この怖い話にコメントする

山小屋の女
関連ワード