洒落怖
冷静な夫

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そういえば、このスレで始めて投下する話なんだが

若いうちに癌になると、細胞の分裂が早いから腫瘍がすぐに大きくなるの
2週間前に1mmだった影が、3㎝まで大きくなるとかもある
患者さんは、30台の女性だった
脳腫瘍。脳の癌ね。いわゆる
見つかったときには、患者さんは意識不明の状態だった。
その人は夫も息子もいて、最悪なことに妊娠3ヶ月の状態だった
入院して一月経たないでなくなったんだけど、意識不明で2週間ぐらい経ったときだったかな
意識不明でも尿もでるし、毎日清拭をするんだけど、「臭い」がしてくるんだよな
肉が、というか、「細胞」が腐っていく臭い。
死臭って言うんだと思う。
気にしなければさほど匂わないけど、日に日に強くなっていくんだ
肉体は目に見えて変化はないけど、アラームの鳴る傍でどんどん四肢が腐っていく感じ

夫は毎日病室に泊まっていた
冷静に医者の診断を聞き、腹の中の子の安否を聞いて、「恐らくは…」と医者が言うと「そうですか…」とひとこと喋っただけ
理解して、現実を冷静に受け止める強さを、持っていたのだと
最初はそう思った

361 2 2010/01/19(火) 03:21:32 ID:Pm6m84kC0
死臭がして1週間ぐらいして、(…もう駄目だろうな…)って感じで俺も処置をしてたんだけど、母体の腹が妙にねちょねちょしているのに気付いた
そのときは、死に逝く人の肉体の変化かなって思ってたんだけど
そのねちゃねちゃした部分が、妙に黒くくすんでた
「いつもすみません」と、夫は私に頭を下げた。
妙に居たたまれない気持ちになって、何か毎回泣きそうになるんだけど
にっこり笑って「いえいえ」といつも返していた
そうして退室して、部屋を出た

暫くして、患者のサーチュレーション(血中の酸素濃度)が90%を気ってアラームが鳴ったから、部屋まで向かった
カーテンが閉まって、中の様子は見えなかったけど、シルエットで夫が傍に立っているのが分かった
サーチュレーションが下がったとはいえ、吸引ぐらいしかすることがなかったけど、準備しようとして気付いた
どうも夫が、妻の上にのしかかろうとしているみたいだった
正しくは、お腹に顔を当てて母子の呼吸を聞こうとしてる感じか
部屋の前で少し様子を見ていたんだけど、どうも様子が少しおかしい
夫の顔が、左右に揺れていた

362 3 2010/01/19(火) 03:46:55 ID:Pm6m84kC0
窓の反射を見て、絶句した
夫が舌を出して、チロチロと妻の腹を舐っていた
へその周りを重点的に、何度も何度も
モニターの音がピッピッと鳴っている間、夫は無言で腹を舐め回していた
いつも自分が拭いていた腹のネチャネチャは、夫の唾液だった
無言で部屋を出て、先輩に相談して一緒に行こうとなって、あえて大きな足音をさせてその部屋に言ったら
夫は何食わぬ顔で本を読んでいた

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