洒落怖
自衛隊の日常

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24 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/01(月) 02:21:19.41 ID:xDv0ryRQ0
これは俺が体験した話だ。
今から遡ること数年前の4月、俺は自衛隊に入った。
教育期間中は暴言、殴る蹴るは当たり前、官舎に怒声が響かない日はなかった。
特に、NとSという上官にはよくしばかれ、毎日必ず誰かはこの2人に殴られていたと思う。
俺の同期に、運動が出来なくて物覚えが悪い奴がいた。
当然、NとSの格好の目標となった訳だが、仮に名前を佐々木としよう。
佐々木とは同じ班で同じ部屋だったのでそれなりに仲良くしていた。
5月の半ばの事だった。
銃を持って走っている時に佐々木が吐き気を催してうずくまった。
Nは佐々木の胸ぐらを掴むと、顔面をぶん殴って倒れた佐々木の腹を数回蹴り飛ばした。
よくある光景だ。
だから、止めようとする人は一人もいない。
ここではSやNのような上官が「法律」なのだ。
彼らに口出しすれば今度は自分たちが佐々木のようになるのは目に見えていた。

25 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/01(月) 02:23:31.80 ID:xDv0ryRQ0
その夜に、たまたま事務室の前を通りがかった時に佐々木の泣き声が聞こえた。
「おら、立てやてめぇ!」…Sの声だ。
「お前、もう1回泣き言ほざいたら顔面に蹴りを入れるからな」…これは別の上官の声。
「俺はな、別にお前がどうなろうと知ったこっちゃ無い。ここでくたばってもどうでもいい
 お前よりもお前の銃のほうが心配だな」…Nだ。
S「死ね!」
…別に珍しい光景ではない。ここではよくある日常の光景だ。
それから、佐々木は段々ノイローゼ気味になり、5月の下旬に佐々木は自衛隊を辞めた。
「僕は道具じゃなくて人間なんだ。殴られれば痛いと思い、貶されれば傷つく
 『あの人達』はなんとも思わなかっただろうな。ただ怒鳴って殴って蹴っていればよかったんだから
 けれど、僕はもう限界だった、何もかもが嫌になったんだ
 日本を守りたいと思って入ったのに…殴られるために入ったんじゃないんだ
 この数カ月で僕は自衛隊というものにほとほと幻滅した」
佐々木は最後、涙を浮かべながら俺にそう言って官舎を出ていった。

26 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/01(月) 02:26:22.66 ID:xDv0ryRQ0
それから時が流れて8月、俺はまだ教育期間の頃と同じ部隊にいた。
NとSも同じだ。
ある日、2人が俺に言ってきた。
「実はな、教育期間中に辞めた奴らが今どうしているか調べることになったんだ」
「でさ、佐々木の所にも行くからよお前も一緒に来いよ」
上官の頼みならば逆らえるはずはない、俺は一緒に行くことになった。
N「ところでS、佐々木の名前覚えてるか?名字しか覚えてねぇや」
S「知りませんよ、さっきまであんな奴の存在自体忘れていましたからw」
…彼らにしてみれば佐々木はその程度のものでしかなかったのか…
自宅に行くことになり、俺は彼らの会話を聞きながら久しぶりに佐々木へ電話をした。
「ワカッタ。コッチデマッテイルカラ」
以前とは全く違う、抑揚のない機械のような声だが確かに佐々木の声だった。
そのまま3人で彼の家へ向かった。

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