洒落怖
自衛隊の日常

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27 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/01(月) 02:28:47.45 ID:xDv0ryRQ0
家へ着き、チャイムを鳴らすと佐々木ではなく別の人が出た。
年の頃は20代前半、落ち着いた雰囲気の女性だ。
佐々木の家族ではなく親戚の方だという。
「あの、〇〇(佐々木の名前)さんはいらっしゃいますか?」
俺がそう聞いた途端、女性は表情を曇らせて言った。
「〇〇の知り合いの方ですか?…どうぞお入り下さい」
奥の和室に案内された俺達は、しばらく言葉を失った。
部屋の西側にあった仏壇…そこに置かれていた真新しい遺影は紛れも無い佐々木のものだったのだ。
しばらくは無言の時間が流れたが、俺は意を決して女性に質問した。
「あの…〇〇さんはどうして亡くなったんですか?」
「自殺です、1週間前にこの家の2階で首をつったんです。」
俺は混乱した。
さっき電話に出た人は確かに佐々木だったのに…
聞き間違えでは絶対になかった。

28 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/01(月) 02:31:04.60 ID:xDv0ryRQ0
混乱して口の利けなくなった俺に変わってNが話しだした。
自分たちが自衛隊の人間で辞めた佐々木を訪ねに来たことを…
すると、今まで悲しみや困惑のような表情で満たされていた女性の表情が一転して見る見るうちに険しくなっていった。
そして、敵を見るような目で俺たち3人を睨みつけながら言った。
「〇〇は、ちょっと前まではやんちゃというか、陽気なやつでした。
いつもマイペースな彼が、ある時を境に急に変わってしまったんです
精神的に不安定で、全く笑わなくなって、喜怒哀楽のうち喜と楽が抜け落ちてしまったようだったと聞いています。
まるで抜け殻のようだったと…
私たち親戚にも会ってくれませんでした。
そして『こんな筈ではなかった…もう嫌だ』とよくうわ言のように言っていたそうです。」
俺たちは何も言えなかった。
更に女性は言葉を続ける。
「先ほど私が言った彼が変わってしまった『ある時』がいつだか分かりますか?
自衛隊に入ってからです…
こうなってしまったのは全部あなたたちのせいなんです
…返して下さい、〇〇を」
俺はここにいることに耐えられなかった。
Sはばつの悪そうな顔をして顔を背け、Nは適当に聞き流している。
お悔やみの言葉を言った後逃げ出すように家を後にした。

29 本当にあった怖い名無し sage 2011/08/01(月) 02:33:33.17 ID:xDv0ryRQ0
帰りの車で俺は何も喋る気になれなかった。
ただ、後ろの2人だけはパチンコや飲み会の話に華を咲かせている。
信じられなかった、もう佐々木の事は眼中に無いのだ。
夜になっても、まだ俺は車のハンドルを握り続けていた。
最後に官舎を出る時に俺を見た佐々木の顔や、家を出る時に最後に見た
あの女性の悲しみと怒りが入り交じった表情がフラッシュバックのように脳裏をよぎった。
ぼーっとその事を考えながら運転し続けていた。
そして気がつくと、対向車線へとはみ出して、目の前に対向車が迫っていた。
急にハンドルを切った俺たちの乗った車は、そのまま田んぼへと突っ込んだ。
幸いにも、3人とも大きな怪我はしていないらしく、その場で警察を呼んだ。
警察に電話をし終わった時に不意にメールがあった。
確認してみると佐々木からだ。
全身に鳥肌が立ち、血管が一気に縮み上がったような気がした。
「許さない」メールの内容はそれだけだった。

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