洒落怖
廃墟探索

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922 光塵船 New! 2011/12/02(金) 17:33:15.67 ID:TQzRxFzv0
私たちは叫び声にならない叫びを上げ、外に出た。俺は心が折れた。棺桶のことは聞いていても、
祭壇への心構えなど無かった。俺の心は一瞬で折れた。もう二度と入りたくなかった。数秒間見
ただけだが、それは確かに祭壇だった。無茶苦茶な祭壇だった。ぐちゃぐちゃと色々なものが並
べられ、両脇に仁王像のようなものと観音像のようなもの、中央には何か神の名を書いたような
掛け軸がぶら下がっていた。イエス像のようなものもあったと思う。ぐちゃぐちゃと色んなもの
があった。そして俺は見ていた。祭壇の左に掛かっていた白黒の額入り写真、あれは遺影だ。
俺の心は打ちのめされ、再び入るどころか建物を見るのさえ耐えられなくなっていた。しかしG
は違った。Gがアスペルガーであることと関係あるのかは分からないが、Gはもう一度行こう、
そしてもっと奥まで行こう、と言った。彼はこういう時に止めてくれないのだ。いつの夜だった
か、Gが公園に生えた高い木に登り出し、見るからに枝が折れそうだったので、私は下から何度
もGに向かって、降りてくれ、降りてくれ、と叫んだが、彼は一番高いところに登っていった。
辛いものだ。俺はGが一人でこの奥に行くと無事に帰って来れない気がした。

923 光塵船 New! 2011/12/02(金) 17:34:06.38 ID:TQzRxFzv0
結果から言うと、棺桶のある地下室への扉は見つからなかった。ただし、十分に探索したわけで
はない。私たちは地下室を見つけたが、そこには棺桶は無く、四階まであるであろう中の二階ま
で歩いてみたが、私には三十分程度がそこに居る精神的帰還限界点だった。私たちは廃墟を後に、
朝を迎えた。

以上が私たちが体験したこの一夜の顛末である。
さて、ここで疑問だが、廃墟の角には自動販売機が作動中だった。飲料会社はいったい誰と契約
している? また、M町にあってM駅まで徒歩数分という一級立地にあって、なぜこの廃墟は解
体されない? 別の夜にその裏通りを歩いていた私が廃墟二階あたりから耳にした、ゴスン、ゴ
スン、という音の正体は? 廃墟の正面にある駐車場、廃墟の正面に政党の街頭演説車が停車し
ていたことと関係は?(何党だったかは忘れた。全国規模の政党) そしてこれが一番大きな引っ
かかり……兵庫県庁が目と鼻の先にあることとの関係…。
俺には、あの建物が、いくつかの要素から成る、異様な力によって守られ、壊されないでいる建
物である気がしてならない。

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