洒落怖
廃墟探索

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それで分かったのは、それが完全な地下ではなく、半地下らしく、また、天井が異様に低いということだった。私たちは、二人とも身長が180cm以上あり、屈まなければ頭を擦ってしまうようだった。
この異様な空間を俺たちは誰にも知られることなく(そう信じているだけだが)進んだ。そして、闇があった。
もちろん、既に私たちの電子機器の他に光は無いのだが、私たちの数歩先のそれは、光を当てて
もただただ吸い込まれるようで、何も見えなかった。
私たちは進みかけた足を止めて、その闇の周りを照らしてみた。コンクリートの枠が見える。
錆びた金属のプレートが見える。それはエレベーターの穴だった。
この建物にこれほど深い地下があるとは知らなかった。私たちは引き返し、元の廊下に出た。

893 885 New! 2011/12/02(金) 12:07:54.04 ID:TQzRxFzv0
真っ赤な夕陽が差し込む旧生糸工場四階の静寂は、そこを歩いた者にしか分からないかも知れない。
静かに静かに、沈静しているようで、思わぬ時に黄黒白青赤のどぎつい配色でげらげら笑いが始
まりそうな、それを怖れさせるような、そんな静寂なのだ。私たちはギシギシと軋む木板の廊下
を進んだ。
そういえばあの時俺たちはどこへ行くつもりだったのだろうか。なぜ歩いていたのだろうか。
分からない。私たちはある部屋の扉を引いた。部屋は無数にあったが、鍵のかかってい
るものがほとんどだった。資料室のプレートが傾くこの部屋の扉は開いた。

894 885 New! 2011/12/02(金) 12:08:27.31 ID:TQzRxFzv0
日没の中で暗黄色に染まったその部屋はやはり時間の中で静かだったが、物陰に潜んだ狂人が何時笑い出して現れるかと俺を不安にさせた。
その部屋の雰囲気は、小学校の中の使われなくなり物置にされた教室によく似ていた。
そこは資料室というだけあって、雑然としていながらも、アルミの棚が出鱈目に立っており、ファイルや繭が入っていた。
私はひとつの扉を開けた。職員室の鍵かけのように、たくさんの鍵がぶら下がっていた。
今となっては不可解な行動だが、私はその中から「玄関」と書かれた鍵を取り、ポケットに入れた。私たちは他にも棚を開いた。
大きめの額縁に入った写真があった。それは異様なものだった。写真自体は比較的新しそうだが、はっきりといつ頃なのかは分からない。

ただ、写真の中で、ぼやけた薄緑色を背景に、ふわふわした白いシャツと紺のロングスカートを履いた女が、手を広げてこちらに微笑んでいる。
おかしいのは、女から手が何本も生えていることだ。いや、そう見えるよう撮ってあるのだ。同じ格好をした女たちが縦に重なっているのだ。手だけを生やして。千手観音のように。その異様な雰囲気と女の笑顔が、俺に新興宗教を感じさせた。

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