洒落怖
夏休みのバイト

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上半身は和服を着た大きめの日本人形なのだが、下半身は何か真っ黒のベタベタしたヘドロのような物体に埋まっており、
引き摺っているように見えたのはそのベタベタした黒い物体の後ろのほうだった。
その黒いヘドロのような物体は、まさに俺達が昼間みた物体そのものだった。
人形はなおもこちらに近付いてくる、そして近付くにつれて鼻をつくような生臭さが漂ってくる。

俺達はなおもずるずると後ずさりし、玄関から外に出たのだが、その時俺はある事に気が付いた。動揺していてそこまで
気が回らなかっただけだとおもうのだが、この人形、何か歌いながら近付いてくる、耳を澄ますと、民謡の手毬歌のような、
でも良く聞いてみるとお経にも聞こえるような、不思議で不気味なフレーズの歌を歌いながら近付いてくる。
結構近くで聞いているはずなのだが、何故か歌詞はわからないのだが…

俺たちが後ずさりして道のあたりまで出た時、Bが「おい、やべーよ!」と俺とAに森のほうを見るよう促した。
俺とAが森のほうを見ると、あちこちの藪がガサガサと揺れている、何か沢山の物がこっちに近付いてくるようで、
その数はどんどん増えてきている。
更に、そのガサガサ言う音に混じって、人形が歌っているのと同じフレーズの歌があちこちから聞こえ始めた。

206 夏休みのバイト9 sage New! 2011/05/05(木) 20:55:37.15 ID:dLlXuy+O0
俺はAとBに「やべぇよ!逃げるぞ!」と大声で言い、そのまま全力で道を走り出した。
俺達はそのまま全力で息が切れるまで多分1kmくらいは走り続けたと思う、流石に疲れてAが「ちょっと待てって!」
と俺達を呼びとめその場にヘタリこんだ。
Aは息を切らしながら「勢いで逃げてきたけど、どうすんだよ、俺達の荷物も置いたままだぞ」と。
それに続いてBも「わけも解らず逃げてきたけど、これからどうするんだ…?」と。
俺は2人に、「でも、これからまたあそこに戻るのか?」と聞くと、2人とも無言で首を振った。
その時、森の中からまたあの歌声が聞こえてきた。

Bが真っ青な顔で「あいつら追ってきやがった!」と大声で叫んだ。
俺たちは疲れていたが、それでもそこにいるわけには行かずまた真っ暗な山道を全力で走り出した。
それから更にどれだけ走ったか解らないが、ドライブインらしきところにたどり着いた。
勿論、こんな時間にやっているわけがないのだが、それでも安心した気分になったのはたしかだった。そして、俺がふと
携帯を見るとなんとアンテナが立っている。
俺は急いでもらった名刺の電話番号に電話したのだが、流石にこの時間では電話が繋がらない。
すると、Aが自分の携帯でどこかに電話し始めた。
Aは電話越しに何かやり取りしていたが暫らくすると「とりあえず来てくれるって」と力なく答えた。

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