洒落怖
真っ紫

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そして下校直前の掃除時間の事である。グループごとに分かれて校舎内の様々な場所を掃除するのだが、
自分のグループが割り当てられた場所は、校舎の裏庭の方の少々薄暗い区画だった。
例の紫の女の子も同じグループだった。俺の目の前には、全身紫のその子が箒でゴミをはわいている後姿が見える。
周囲には俺とその子しかいなかった。聞くなら今しかない。「なん」「なんで」「な・・・」
言い知れぬおぞ気が言葉をどもらせ、質問を躊躇させ、口がうまく開かない。そしてとうとう好奇心が恐怖心を凌駕した。

876 本当にあった怖い名無し sage New! 2012/01/11(水) 12:58:32.26 ID:1SS1xqKP0
思い切っていっそうその女の子に近づき、「何で今日は全身紫なの?」と聞いた。

その瞬間、女の子が体全体でこちらに向き直り、

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

と飛び出さんばかりに眼球を開き、顎が外れんばかりに口を開き、いつもの女の子とはとても思えない鬼女の様な真っ紫の表情で絶叫していた。
俺もたまらず絶叫し、箒を放り投げて教室に駆け戻った。
やがてチャイムが鳴り、掃除時間は終わり俺は机に座っていたが、その間教室でどう過ごしたかはまったく記憶にない。
ホームルームが終わり、下校の時間になると、とにかく早く家に帰りたかった。
毎日一緒に下校する友人はその日クラブ活動があり、今日は自分1人で帰る日だった。
下駄箱に通じる廊下を歩いていると、前方から例の紫の子が友人2人と歩いてくるのが見えた。
その子もクラブ活動に行くのであろう、体操服を来てこちらに歩いてくる。
視線を合わせないように小走りにすれ違おうとすると、その子がすれ違いざまに

「モウキカナイデネ」

とボソッと言った。「もう聞かないでね」ではなく、宇宙人やロボットの真似をする時の様に、
抑揚の無い声で「モウキカナイデネ」と言った。俺は走って校舎を飛び出した。どう帰ったかも覚えていない。

877 本当にあった怖い名無し sage New! 2012/01/11(水) 12:59:16.28 ID:1SS1xqKP0
家に帰ると、ゲーム等をしたりしてその事をなるべく考えないようにした。
晩御飯を食べ終わるくらいまでは、それなりに楽しく過ごした。が、布団に入って寝る段階になって再び恐怖感が襲ってきた。
「もし明日も紫だったらどうしよう・・・」と思うと、学校に行くのが憂鬱になってきた。親にも話せない。
ノイローゼになるかもしれない。憂鬱な気分のまま、その日は眠った。

翌朝のいつもの登校中。また例の女の子とその友人の後姿が前方に見えた。
女の子は普通に戻っていた。安堵した瞬間、なぜか涙が出てきた。一緒に登校している同級生たちに不思議がられ、
からかわれながらも、嬉しくてしばらく涙が止まらなかった。
女の子とすれ違う瞬間も、まだ少し恐々とした気持ちで顔を覗いたが、皮膚の色も通常に戻っていた。
「おはよう」「おはよう」と普通に挨拶をかわした。

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真っ紫