洒落怖
天女さん

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翌日夕方。
明日の撮影終了の打ち上げの材料買い出しにいかないとって話が出て。
カメラマンの人と俺とレフ板持ちの人二人の計四人で買い出しに出た。
「すみませんね。恋人があんな役って嫌でしょう?」
「いや、なんか凄い迫力ある撮影で…天女さんの演技も凄いし」
「凄いですよね!彼女。あそこまで役作りしてくるなんて…プロ意識凄いです」
「そんなにですか」
「最初うちの大学の一昨年のミスコン優勝者とかに頼んだんですよ。
ああいうのに出るのって芸能界狙いかアナウンサー狙いですから。
けどOKしてくれたのが演技力が並程度の人ばっかりでね。
監督がもう怒り狂っちゃって」
「天女さんは?」
「自分からですよ。うちの映研結構評価高いんで。
他にもいくつか回ってどこからも欲しいって言われたそうです。
うちのが一番台本が面白そうだからってうちに決めてくれたんですよ」
「真剣味が違うわけだよね。スタッフロールに名前のるの楽しみ」
「低予算で自主制作サイコホラーなんて滅多にないからな」
「大抵とんちんかんなコメディ!」
映画好き同士じゃないとわからない話になって俺は黙った。

1000 本当にあった怖い名無し sage 2012/05/30(水) 23:25:06.14 ID:HhN52zwF0
買い出しを終えて帰ったら、夜になってた。
皆怒られるだろうなと思ってたらログハウスの今で監督とライダースーツが酒飲んでた。
買い出し組全員でわけわからないでいたら、監督が撮影終わったっていうんだ。
「え?」
運転手してたカメラマンが凄いプライド傷ついたみたいで監督にからみはじめた。
どういうことだよって詰め寄ったら監督が酒の勢いでかしらんけど。
「凄いリアリティだったよ」
カメラマンが絶句。レフ板持ちが青ざめた。
「変な言いがかりつけんなよ。了解はちゃんととったからな」
ライダースーツが言った。

撮影部屋にいったら音響の女の子がシーツかぶった人に話しかけてた。
天女さんだよ。他にいるわけない。
俺の顔見た途端にバツが悪そうな顔になって出ていった。
リアリティって言葉が途端に重くのしかかってきた。何を撮影したんだろう。
「頑張ったな」って言って横に座った。
リアリティってなんだろう。あの場面のリアリティって、ひょっとしてシーツ無しか。
十分位だんまり決め込まれた。
心の整理が必要なんだろうなって思って席を外そうとしたら袖を掴まれた。
「どうしてもするんなら明日にしてって言ったの
そしたら…明日良いなら今日でもいいだろって…
されちゃった」

ライダースーツは天女さんに撮影の最中に惚れていいよってたらしい。
「恋人」って言ったのもそのためだったみたい
明日っていうのがライダースーツを怒らせたみたいで暴行がはじまって。
リアリティ重視の大馬鹿野郎は途中までは止めようとしてたらいしけど。
天女さんはもうやめてくれないと諦めて。
この辛さを無駄にしないようにって役に入ったそうだ。
で、監督自らカメラとって撮影したんだとさ。
壮絶なやり取りの中でこういう事実が判明して、
映画はお蔵入り。

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