洒落怖
ローラー車

この怖い話は約 3 分で読めます。

506 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/07(木) 09:58:14.36 ID:6R/OCGUJ0
怖い話というか,なんというか・・・
とりあえず,書いてみる。
俺は,とある調査関係の仕事をやっている。
4年ほど前に引き受けた調査で,労災関連の話があった。
ある会社で,事故があった。
ローラー車というのかな,地ならしする大きなローラーが前についた車に,女性従業員がひき殺されたって事件だった。

保険の支給の関係上,事故の概要調査や,遺族の意向を聞く必要があった。
で,俺は,遺族の話を聞きに,女性従業員の実家へと車で向かったんだ。
関西の方だが,俺自身は,初めての地域だった。元々漁村だったこともあり(今も釣り客は多いみたいだが),潮の香りに満ちた,何というか集落というのは,こういうところを言うんだろうなと思った。
人通りもほとんどなく,天気が良い。昔ながらの家々が建ち並び,なんだか郷愁を誘う。
ただ,結構道が入り組んでたり,一方通行が多かったりするんで,ナビではこれ以上無理と思い,車を空き地のようなところに停めて,俺は徒歩で家を探すことにした。

507 : 506 : 2012/06/07(木) 09:59:06.73 ID:6R/OCGUJ0
しかし,見つからない。
15分ほどさまよっただろうか,いったん車のところに戻ってきた俺は,道を尋ねることにした。
ちょうど,女性が洗面器のような物を持ってテクテクと前を歩いている。
不審者に思われないよう,「あの~,すいません,ここらにお住まいのAさんのお宅はどちらでしょうか?」と聞いた。

508 : 506 : 2012/06/07(木) 10:00:36.80 ID:6R/OCGUJ0
前を歩いていた女性が振り向く。
俺は,心臓を鷲づかみにされた気がした。
普段着であるが,後ろ姿は,取り立てて特徴があるわけではない。
しかし,振り向いた顔は,唇がベロリとめくれ,歯が何本も抜け落ち,顔全体がいびつな歪み方をしている。
右目は血走ってギロリと見開かれているが,左目は見えているのか怪しいくらい瞼が落ちている。
後ろから見た髪は,取り立てておかしな様子もないのに,前髪は,気の毒なほどに荒れ果てている。
顎の形もおかしい。左から右へグリッと突き出したような形状で,不自然なほど左の頬がこけている。
まるで,そこだけ中身がないかのように。
昔,グーニーズという映画で,スロースという登場人物がいた。
第一印象は,子供の頃に見たそのスロースだった。いや,スロースをもっと歪ませたような・・・。

509 : 506 : 2012/06/07(木) 10:02:12.81 ID:6R/OCGUJ0
俺は,おもわず目を背けそうになったが,それは失礼だ。
何もなかったように,「ご存じですか?」と聞いた。
「・・・あっでぃ。」女性は,自分の進行方向に向けて指を指した。
声を出すのが,かなり苦しそうだった。
「すいません,助かります。ありがとうございました!」
俺は,そう言いながら一礼し,女性に教えてもらった方向へ早足で歩き出した。
作り物の怖さではない。こののどかな風景に,今し方出会った現実の女性が,あまりにも不釣り合いに思えた。カバンを持つ俺の手が,少し震えているのが分かる。
何かの病気だろうか。生まれつきの障害だろうか。年齢ははっきり分からなかった。後ろ姿は,それなりに若く見えたのだが,顔を見ると,若いとも思えない。
俺は,後ろを振り返ることなく立ち去り,目的の家へとたどり着いた。

この怖い話にコメントする

ローラー車