後味の悪い話
あだち充の短編

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雪が積もってきたとバーのマスターが言い、Bは席を立つ。
「お先に」と言ってAの分の代金も一緒に払いバーを出た。

980 : 4 : 2012/05/01(火) 05:10:09.03 ID:SGrejIs80
そしてBは公衆電話から友人に「今度の同窓会、急用ができて行けそうにないんだ」と伝える。
「Aによろしく伝えておいて」とも。

Bはバーで偶然顔を合わせたときから、汚い身なりをしたその男が、あの30年前の春、都会に引っ越していったAだと気づいていた。
けれどAの変わりように驚き、名乗り出ることができなかった。
そしてA本人から現状を聞かされ、Aが自分たちに今の姿を見られたくないと感じていることを知り、
名乗らずに「他人」を貫き、そしてもう会わないことを決めたのだ。

電話を切ってBがボックスから出ると、雪の中にAがたたずんでいた。
Aの手にはナイフが握られていた。
「考えてみたらこんな汚い格好じゃ友人たちに会えないんだよ…。…服を交換してくれ。金も」
バツの悪そうな顔をしながら、Aはナイフをちらつかせる。
Bの目に涙が滲むのを見て、「殺したりしないから泣くなよ」と慌てるA。Bはおとなしく服を交換する。
「だから泣くなって。いい年してみっともない」と戸惑うAに、「泣き虫は子どものころからなんだ」とBは言う。

Bのスーツは少し大きかったが「まあ大丈夫だろう。バレやしない」とA。「裏に名前が入ってる」と教えるB。
「こんなところ誰も見ない」そう言いながら確かめようとしたAは、そこに書かれた名前が自分の友人のものだと気づく。
Aは顔をあげる。

自分がさっきまで着ていた汚いコートに身を包んだBが涙を流す姿と、小さかった頃のBの泣いている姿が重なる。
Aのナイフを持つ手は震えていた。

楽しかった子ども時代。Aのあとをついてくる小さなB。

『このまま春なんか来なきゃいいのにね』
『春が来なきゃAは都会になんか行かなくていいんだもんね』
『そうすればずっとここにいられるんだよね? ね、A』

雪の上に一人の男が倒れていた。男の体の下の雪は、血で赤く染まっていた。

981 : 本当にあった怖い名無し : 2012/05/01(火) 05:12:23.83 ID:SGrejIs80
>>977-980
長くなってすみません、以上です。
二つ目の方は、最後に倒れている男がAなのかBなのかはわからない感じで
けど倒れてるのがAでもBでも救いようなくて凹んだ

983 : 本当にあった怖い名無し : 2012/05/01(火) 08:16:12.05 ID:Hw8FMlsz0
あだちは昔はこんなだったんだぜ・・・
http://www.chukai.ne.jp/~gallery/baka47.html

984 : 本当にあった怖い名無し : 2012/05/01(火) 08:16:49.66 ID:RANRHHGc0
>>981
どっちが死んだんだよう(つд`;)・゚・
朝っぱらから切ないよう…

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