洒落怖
踏切

この怖い話は約 3 分で読めます。

恐らく僕はもうすぐ死んでしまうでしょう。きっと心臓麻痺か何かで。
でも、病気ではないのです。僕は殺されるのです。
きっと、話したところで誰も信じてはくれないでしょう。
それでも、ここに僕の死んでしまった本当の理由を書き残します。

僕の住んでいた所には、窓から見えるところに踏切がありました。
一年に2人はそこで亡くなります。
すべて自殺です。
基本的に自分が夜型の生活なので、めったに現場に遭遇することはなかったのですが
運が悪いときには散らばった肉片を見かけることもありました。
もちろん、そういうモノは見たくありません。

しかし、直接的でない、いわゆる霊的なモノは好きな方で、夜出かける時などは
「幽霊に出会わないかな?」とワクワクしながらその踏切を渡ったりしていました。
しかし、二年以上経っても、そういった類の事には出会うことはありませんでした。

そして、3週間前のバイトを止める日、同僚達から花を貰い、
飲み会などを終えて自宅に帰る途中、例の踏切の手前で
「自殺スポットに置いてある花束は自殺者を呼び込む」
と言う出所のハッキリしない記憶が蘇ってきました。
せっかく同僚達がくれたものですが、家に持ち帰ってもおそらく捨ててしまうだけ。
それならばいっそ、と踏み切りの横にそっと置いて帰りました。

その晩は何となく寝付けず、朝方になっても目は冴えたままでした。
そして、なんとなく、本当に何となく窓の外に目をやると
鮮やかな青のジャンパーを着た五十歳くらいの男が踏切の辺りでウロウロしていました。
まさかな…と思いながらその行動を目で追っていると
「カンカンカンカン」と耳慣れた音と共に遮断機が降りていました。
振り返って時計を見ると、ちょうど始発の電車がやってくるころです。
窓の外に視線を戻すと、男は足を止めて、僕の置いた花束をじっと見つめていました。

だんだん電車が近付いてきます。
男は視線を足元に落としたままです。
僕の心臓の鼓動が早くなります。
電車はもうすぐそこに迫っています。
僕は男から目を離せません。
電車が十分に近付いたところで、男は遮断機をくぐり、線路上に立ち、こちらを見上げました。
男と僕は目が合っってしまいました。その時
「オマエが」
と言う声が耳元で聞こえたのです。
次の瞬間、男は電車に吹っ飛ばされ視界から消えていました。
僕は恐ろしくて振り向くことも出来ません。
きっと幻聴だ。昨晩あんな事をしたから聞こえた気がしただけだ。
そう自分に言い聞かせながらゆっくりと後ろを振り向きました。
そして、思った通りそこには何もありませんでした。
ただ、なんだか鼻を突くツンとした臭いが一瞬したような気がしましたが
その時はあまり気にしませんでした。

しばらくの間ボーッとしているとパトカーや救急車のサイレンが聞こえ始めました。
これから数時間は警察なんかが慌しく作業を行うはずです。
こういう場合は、目撃者として名乗り出るべきなのでしょうが
正直、面倒ごとには巻き込まれたくないという思いで、黙っていることにしました。
きっと目が合ったと言うのも僕の思い過ごしだろうと決め付けることにしました。
とにかく凄い光景を見たことを友人に報告しようと思い携帯を探していると
「ゴトッ」という何かが落ちる音が玄関の方から聞こえてきました。
なにが落ちたんだろうと扉を開けると、お気に入りの靴の横に男が落ちていました。
正確に言えば男の首と足とどこだかわからない欠片です。
僕はおそらく一旦そこで気を失いました。

この怖い話にコメントする

  • 匿名 より:

    馬鹿としか言いようがない

  • 踏切