洒落怖
長いトンネル

この怖い話は約 4 分で読めます。

昔、日本海側にカニ喰いにいった時の話なんすが。
親と一緒に車でいってて、俺だけ先に帰る用事があったのね。
金はかかって仕方なかったけど、贅沢はいえんから朝早くに旅館でて、電車に飛び乗ったわけさ。
で、俺馬鹿だから反対方面の電車のっちゃってさ。ガタゴトと
目的地とは真逆の方向にいっちゃったわけね。
電車のってからそれに気付いて、とりあえずこのまま乗り続けてても
仕方ないからって思って降りたんだ。
で、反対方向の電車を待つかって思って時刻表みたら
そこ田舎で雪国だから
冬場とか二時間に一本あるかないかのトコだったわけ。
こりゃやばいって思って、急いで親に携帯で電話かけようとしたけど
山に囲まれて圏外。で、どうしようか悩んだ挙げ句、
用事の方はキャンセルして、とりあえず旅館まで戻ろうと思ったのよ。
でも、電車ないから歩いて帰ろうとしたわけさ。
車道は水吹きだしてて歩き易そうだったし、なにより
確実に迷わずにつけそうだったから一般道を
徒歩で旅館を目指したのさ。

945 本当にあった怖い名無し New! 2007/06/07(木) 13:59:36 ID:05FjsPwO0

多分、一時間もかからんだろうなって思ってたのね。
ウォークマン聞きながら陽気に歩いてたんすわ。
歩くの好きだし、まあ、山道を眺めながらハイキングってのも
楽しいだろうってあくまで楽観的。
こん時はほんと、心霊なんて文字一言もなかったね。
朝だし。
しばらく歩いて大分体も温まってきてさ、この調子なら
すぐつくだろうなって思ってたのよ。結構道すべったりして
危険だったけど。時々、車が横を通りすぎていくんだけど
大抵のドライバーは「なにやってんだ?」って顔でこっちも
みてる。「そんな顔すんなら停まってくれよ」って内心思いながら
車を見送る。多分、俺が女の子、子どもに見えたならすぐにでも
声をかけてもらったんだろうけど、見かけオヤジだったからなあ。
でもまあ、気にせずガンガン進んでいったわけだ。
するとさ、あるのな。やっぱり山掘ってできた道だから。
トンネルが。
一本目は結構短いの。大体50mぐらい。
もうすぐに向こう側が見えてる。
でもやっぱり不気味だからウォークマン全開で
突入。もうガンガン、車が横切っていくから怖い怖い。
別の意味でスリリング。でもまだ楽しんでた。

947 本当にあった怖い名無し New! 2007/06/07(木) 14:11:45 ID:05FjsPwO0
一本目を抜けて安堵した矢先に
すぐ目の前にまたトンネルが見えたのよ。
「またかよ」って思ってさらに愕然。
向こう側の明かりが点。「長ッ!」
思わず突っ込むほど。一本目の時も極力、トンネルの壁とか
気にしないようにしてた。オカルト嫌いじゃないけどこんなトコで
出くわしてもおれ徒歩だし。逃げようがないじゃん、トンネルって。
まあ、朝だし、なんにもないかって思いながら中入ったのよ。
トンネルの中ってあんまり昼とか夜とか関係ないね。
橙灯が中途半端にぽつぽつついてるだけで外のあかりがすぐに
かき消されてく。で、俺は極力、前と足下しかみてなかったんだけど
田舎だからなのか、すっごいボロボロなのよ。
溶けた雪が隙間からぽたぽた滴ってるし。
で、ふと気付いたのよ。車がこないの。
さっきまでびゅんびゅんきてたのに…中に入って五分ぐらい歩いた
あたりで…全然車が走ってこないの。たまたまなんだろうけど。
なんか急に寂しくなってきた。だって車がきてるから
人の気配がしたわけで…俺がトンネルに入ってから
その気配が全然なくなった気がしたわけ。でさ、
急に冷えてきたの。トンネルの中って普通暖気がとどまるから
ぬくいはずなんだけど、汗が冷えたからなのかどうかは
わかんない。けど、めっちゃくちゃ寒いって思い始めた。

この怖い話にコメントする

長いトンネル