人形にまつわる話
姪と人形

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やがて夕方になり姉と姪が帰ってきた、二人とも別段変わった様子はない
夕食の際、姪は妙に口数が少なく、また姉も姪も少し食欲が無いようだった
その事を問うと、なんでも二人とも口内炎ができていて沁みるんだそうな。
姪の口を開けさせて見てみるとなる程、咥内に赤い血膨れのようなものがいくつか見受けられた
昼に何か刺激物でも食べたのかと重ねて問うと、ざる蕎麦だと言う
夏の疲れが出たのだろうと姉は言うが、二人同時にとは、何か釈然としないものを感じながら、その日は終わった。
翌朝、朝食の折りに姉の顔を見ると、首の下、鎖骨の辺りに赤い斑点が幾つもあった、毛細血管が浮き上がったような、小さな蜘蛛の巣のような斑紋だ
さらによく見ると、袖無しのブラウスから覗く二の腕にも同じ様な斑紋がある。
オレは結構な酒飲みで、健康診断の際にはいつも肝臓を指摘されるので知っている
蜘蛛状血管腫、血管の塊である肝臓が詰まることで、血液が他の経路へバイパスするためにおこる症状らしい
しかし姉は酒は一滴も飲めない

742 5 sage 2007/11/05(月) 00:39:33 ID:68wuSE2E0
また、これまでに一度も肝炎などを指摘された事はないはずだし、輸血をしたこともないと言う
姪は今朝は大人しく食べ物を口に運んでいた、口内炎はもうひけたと言う
昼近くになり、しきりに体のダルさを訴える姉は、姪を幼稚園に送りに出た
姉達を玄関で見送った後、オレは甥とブラリとその辺りへ散歩に出掛けた
まだ暑い陽の盛りだったが、太陽の下を、雑貨屋で買ったアイスなどを頬張りながら歩いていると、まさに日本の夏休みという感じだ
水田に広がる青い稲穂が風に揺れて涼しげだったと覚えている
何の気なしに足があの神社の方に向いた
長い石段を登り、社の前に立つとオレは小銭入れから五円玉を出し、甥にも渡して賽銭箱に入れると手を合わせた
その後、あの箱に向かった
人形がなかった
様々な物が捨てられた、その一番上に置いたあの人形がどこを見ても無い。

オレは甥を連れて家に戻ることにした
帰ると姉は既に戻っており、日当たりををしたと言って、茶の間で横になっていた。
姉の家と言っても、主のいない部屋を他人が勝手に覗くのも気が咎める
オレは甥に頼んで姪の部屋を調べてもらう事にした、あの人形がないかどうかを。
15分程で甥は戻ってきたが、オモチャ箱から押入まで探したけど、人形など無いと言う
それならばそれでいい
だいたい、昨日は町へ買い物、今日は幼稚園なのだから神社に行く時間などあるわけないのだ
それよりも今考えなくてはならないのは姉の事だ、オレは人形の事は考えない事にした
姉のところへ行くと自室で休んでいるよう促し、明日にでも病院に行くことを提案した
それでオレの出来る事は全てだった
料理も洗濯も家事は何も出来ないに等しい
結局その日の夕飯は甥と店屋物をつつく事になった。

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