人形にまつわる話
姪と人形

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今ならわかる、当時離婚したばかりのオレは、小さな、頼りない命に餓えていた、誰かを、全力で守りたかった

甥が姪の布団を抱えて上がってきた
甥にとってはキャンプな気分だったのかもしれない

この二人に限らず、親類の子供達にあう度に、愚にもつかない怪談話をして、怖がらせては面白がっていたオレだった
だが、この時はそんな気分でもなかったし
また、そんな雰囲気でもなかった
で、オレはスサノオのオロチ退治の話をしてやることにした
今日買った本の内容を子供向きにして
今から思うと子供には充分コワいか

最初に甥が寝た

姪の方はまだ眼が冴え冴えと、じっと天井を見ていた
次に寝てしまったのはオレらしい

夜中、顔にサワサワと顔に何かがあたる感じがして、くすぐったくて目を覚ました
こじ開けるようにして瞼を持ち上げた
目の前、顔のすぐ近くにあの人形の顔があった
頬に人形の髪の毛があたっていた
人形の肩の辺りに小さな指が見える
悲鳴をあげるのは、生涯、後にも先にもこの時だけのために取っておいたのに

750 13 sage 2007/11/05(月) 00:54:50 ID:XmXn5Sn80
人形の顔の、そのまた背後に姪の顔が見える
姪が人形を捧げ持ちオレに向けて何かを喋ってた
人形にオレを紹介してるのか?
体が動かなかった目玉だけが、ただギョロギョロと自由に動かせた
声も出なかった

悲鳴をあげるのは、生涯、後にも先にもこの時だけのために取っておいたのに
ここで、当時のオレの状況を説明しておく
姉の家に居候していた時、オレは離婚を機にそれまで15年勤めた会社を辞めていた
結婚と同じ様に、離婚もまた体力と精神力を消耗する
しかも結婚は二人の共同作業だが、離婚は独りの戦いになる
疲れていた、心身共に
退職金は丸々元妻に渡したが、失業手当は 三ヶ月は出るのだし
前に来て、この街の風景が気に入っていたから、少し静養するつもりだった、もちろん三ヶ月丸々ここに居座るつもりはなかったが
丁度、旦那が単身赴任、姉夫婦にとっても悪い話ではなかった、いわゆる番犬がわりだ
ことわっておくが、オレは腕に自信はない、非戦闘民族だ
オカルトは好きだが、呪文などしらない
そして疲れてもいた
この状況下でオレに何ができたろう
全てが見間違い、勘違いの世界ではなかったか
今、他人と変わりない日常を送っているオレはそう思う、あれは本当に現実のことだったのか
だからこうして書く、一つひとつ、当時の事を思い出しながら

751 14 sage 2007/11/05(月) 00:55:35 ID:XmXn5Sn80
話をその晩に戻す
人形はオレの顔の前にあった
オレは金縛りにあったように動けない
今まで、金縛り、って現象に出会った事は何度かあった
だけど、瞼を閉じることも出来ない、そんな金縛りははじめてだった
それに、姪が呟いている、この言葉は何語だ?
もとより西洋圏の言葉でないのはわかる
でも、中国、韓国、そんな言葉でもない
強いて言えばやはり日本語か
も少し、日本語勉強しとくべきだった
ソミンって言葉、皆知ってるか?
当時のオレは全く知らなかった

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