厳選怖い話
角田の森の廃屋

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Hの話によれば、あれは幽霊などではなく間違いなく生身の人間であったとのこと
あんな所に人が住んでいるというのは、にわかには信じ難い話でしたが、TはHの頬が赤く腫れているのを見ていましたし、
Hがそんなにうまい嘘をつけるとも思わなかったので、私はその話を信じました

ただTはHが捕まっている間、廃屋の方からの物音や話し声などを一切聞かなかったそうです

森の入り口から廃屋まではそんなに離れてはいないのですが

25 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/08/19 23:03
それからしばらくは、角田の森へ行くことはありませんでした
ところが一週間ほどたったある日、ダイエーの7階で遊んでいた時でした
Hが「今度夜にあそこへ行ってみようぜ」と言い出したのです
あんなに恐ろしい思いをしたのにこいつは何を考えてるんだと思いました
今思えば、ガキ大将的な存在だったHは、無様な姿を見られた事が我慢ならなかったのでしょう

Tはすぐに反対しましたが、Yがやけに乗り気で「行こう、行こう、大丈夫だって」
と私やTをしつこく誘いました

私も内心は絶対に行きたくないという気持ちでしたが、ここでビビッたらかっこわるいという思いが先に働き、Yの粘りもあって最後には「別にいいよ」と答えたのです

結局Tは、親が夜の外出を許してくれないという理由で参加しないことになりました

その翌日の夜9時半、私達はサレジオ教会の前で待ち合わせました
そして自転車をサレジオの前に置き、私達は角田の森へと向かったんです
昼間でも不気味なこの森、夜に見るそれは表現し難い異様さを放っていました

魔界への入り口というか、悪霊の巣窟というか、とにかくそれ以上近寄るなという邪悪な意思を発している様に感じました
私はすっかり怖気づいてしまい、「やっぱりやめよう、やばいよ」と言いましたが、
YとHは聞く耳を持たず
「ここまで来て何言ってんだよ、いくぞ」と崖を登り始めました
すぐにでも逃げ出したい気分でしたが、一人でサレジオまで戻るのも怖かったし、森
の前で一人で待っているのもご免でした
ほとんど半泣きで二人の後を追ったのです
真っ暗でほとんど何も見えない中、手探りで腰をかがめ、物音を立てないようにしな
がら、私達は廃屋の前まで辿りつきました

26 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/08/19 23:05
私の心臓は早鐘の様に、激しく脈打っていました
そんな私をよそに、Yは一人で廃屋の脇に回り、ガラスの無い窓から中を覗き込んだ
のです
Yは虚勢を張っていたのか、本当に強心臓の持ち主なのか、私は信じられない思いで
Yの行動を見ていました
言いだしっぺのHでさえ、私の横で動けずにいましたから
「何だ、誰もいねぇじゃん」
Yは持参した懐中電灯を点け、それを私とHの方に向けてそう言いました
「じゃあ、入ってみようぜ」
Yはしゃがみ込んでいる私達の前へ来て、引き戸に手を掛けました
引き戸がそのボロボロの外見に似合わず、スーッと静かに開いた瞬間を何故か今でも
鮮明に覚えています
Yが懐中電灯で室内を一通り照らし、「大丈夫だ、入ってみよう」と私達を振り向き
ました
先にHが立ち上がり、私もその後を追いました
Yのあまりにも平然とした語り口に、私もHも拍子抜けしたというか、現実感を失っ
ていたんだと思います

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