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売れ残り物件

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870 本当にあった怖い名無し 2013/10/29(火) 18:05:28.20 ID:Q/uQmGXT0
ひとまず、居間へ続く扉を開けて1階の様子を窺ってみます。
ちなみにM宅の間取りは3LDK+納戸で、1階には居間とダイニングキッチン、トイレ、洗面所、風呂があり、2階には3部屋+納戸という造りになっています。
居室を2階に集中させた間取りだけあって、1階のLDKスペースは25畳程度あり、家具も置かれていないその薄暗い空間はガランとしていて広く感じました。
おそらく水道を止めている為だと思いますが、下水臭が上ってきていたので、換気の為に居間とダイニングのシャッターと窓を開けてみたところ、入ってきた日差しで少し明るさを取り戻した室内はきちんと清掃もされていて綺麗に保たれているなぁと思いました。
続いて2階へ行こうと玄関に戻ったところ、佐藤君は相変わらず階段の先の方を見て「ヤベーよヤベーよ」とブツブツ言って待っていました。
「おまえは出川かw」と笑い飛ばしながら一人階段を上がって行く私。

階段を昇る途中、例の“キン!”という音がまた鳴りました。
音の出処は階段や床の軋みの音等ではなく、何と言うか、空間で鳴っているように思えました。
鉄骨造の家は壁内部の鉄骨が金属ストレスでたまに鳴るということは知っていたのですが、「木造の家も同じように鳴るのかな?木材が乾燥割れする音ならキンじゃなくてパキッとかだよなぁ…」などと考えながら2階に到着。

872 本当にあった怖い名無し 2013/10/29(火) 18:09:42.46 ID:Q/uQmGXT0
階段を昇り切った真正面に例の納戸があるので、“キン!”と同様にいきなりは勘弁だなぁと思っていたのですが、そこにいたのはスーツ姿の田中さん(売主業者の社員さん)でした。

「あれ、田中さん」と声をかけると、「あぁ、清水さん(←私・仮名)、下の方から声は聞こえてたから、誰か来たとは思ってたんですが、清水さんでしたか、お疲れ様です」とのこと。

「真っ暗な中から現れられたらビックリしますよ」と笑いながら言うと、
「驚いちゃいました?この家が売れ残ったままだと他の区画も一向に売れそうにないので、せめて見栄えは良くしようと定期的に清掃に来ているんですよ」と笑いながら返されました。

874 本当にあった怖い名無し 2013/10/29(火) 18:13:27.84 ID:Q/uQmGXT0
まぁ、3年間も売れ残ってしまっては、担当者としては上司からも責められて大変だろうなぁと同情しつつ、「内観写真を撮りたいのでシャッター開けますね」と申し出ると、「じゃあ掃除も終わったところなので私は失礼しますね」と言い、1階へ降りていきました。

その後、私は各部屋のシャッターと窓を開けて換気しつつ写真を撮って回りました。

件の自殺のあった何度を含めどの部屋も1階同様に清掃されており、さして変わった様子もなく、デジカメに表示される写真にも何か変わったものが写るというわけでもなく、拍子抜けするほど何も起こらないまま内見を終えて1階へ降りていきました。

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