洒落怖
報い

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後から伯母に聞いた話ですが、この時、伯父は病院から口止め料としてかなりの大金を受け取っていたそうです。
祖父の命を、金で買った訳です。
病院からの帰り道、母は泣きました。私も泣きました。私も母も祖父が好きでした。
だからこそ、大好きな祖父の為に何もしてあげられなかった自分に泣きました。
あの時写真でも撮っておけば良かった。いや、あのシーツを保管しておけば。
そんな事は数限りなく頭に浮かびましたが、今となってはもうどうにもならない事です。
証拠がなくては、例え裁判を起こしたとしても勝てません。
私と母は諦めてしまったのです。
悔しいですが、あの男の暴力に屈したのです。
132 :夕紅 ◆e/DkDKVoCg @\(^o^)/:2015/03/13(金) 00:26:16.88 ID:NteTv0p/0.net[3/8]
その日からでしょうか、止める者がいなくなった伯父の行動は暴君その物になっていきました。
先ず、伯父は自分のマンションを引き払うと祖父と祖母の家が住んでいた実家に戻り、
祖母を追い出すとそこに自分の愛人と隠し子を住まわせました。

そして祖父が死んで間もないと言うのに伯父は床の間に万両を飾ったのです。
万両はめでたい席に飾ったりする植物です。祖父が死んで伯父はめでたいとでも思っているのか――。
私たちはその無神経な行動に激しい憤りと怒りを覚えました。

そして、更に伯父の行動はエスカレートしていきました。
祖父のお葬式の席で遺産相続の話をする。
足が悪く養護施設にいる伯母(母の二番目の姉)の所まで出掛け、
遺産を放棄するという書類に判子を押さなければ施設との契約を破棄し、路頭に迷わせてやると脅し、遺産を放棄させる。
(伯母の施設に入るには身元保証人が必要で、一人は生前の祖父であり、もう一人が伯父だったのです。
施設を出されたら両手と両足が麻痺している伯母は一人では生きてはいけない為、判子を押さざるを得なかったそうです。)
他の、健康な伯母や伯父の事は殴る蹴るで脅し、無理矢理遺産を放棄させました。

そして、その遺産放棄の話は遂にうちの母のところにもやって来ました。
伯父は最初は優しく、かなり低姿勢に母に話しかけて来ました。
しかし、母が放棄を拒み続けると態度は一変・・・机をひっくり返したり、乱暴な言葉で罵ったり、
まるでヤクザの様な様子で母を脅し始めたのです。
ですが、母は頑なに伯父の話を断り続けました。
結果、伯父は手当たり次第にうちの家具を破壊し、一通り大暴れをした後
「てめぇ覚えてろよ」
と、テンプレートな捨て台詞を吐いて去って行きました。
133 :夕紅 ◆e/DkDKVoCg @\(^o^)/:2015/03/13(金) 00:29:29.56 ID:NteTv0p/0.net[4/8]
その一週間後の夜の事です。
仕事から帰り、私は家で母とお茶を飲みながら今後の事について話をしていました。
遺産についてです。
私達はお金が欲しい訳ではありません。
ただ、もう二度とあの男に屈したくないだけなのです。
金の為ならば自分の父親の悲しい死に様すら曲げて伝える、醜い金の亡者のあの男には。
私と母は話しながら、やはりあの男を一生許す事は出来ないーー負けてもいい、どんなに辛い目に遭ってもいいから、
弁護士の先生を探してあの男を訴えよう、そう決めたのです。
そう決意も新たにし、明日からいよいよ動き出そう、でもその為にはしっかり休んで英気を養わないと、と眠りに就いたのですが。

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