洒落怖
僕のお父さんは

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677 名前:名無しの多摩っ子 投稿日:2001/05/01(火) 07:00
久しぶりに書き込みさせてもらいます。
アメリカに留学していたとき、学校で一時広まった都市伝説系の噂話を元ネタに若干アレンジを加えたものです。

舞台の説明を少しだけすると、留学していた町はアメリカ北部の田舎町で、人口は約五千人、
町にある娯楽施設といえば小さな映画館くらいで、隣町までは車で一時間弱、その間は何もないプレーリーが広がっているだけ。
かなり大規模な火力発電所が町外れにあって、町の七十パーセントの雇用を満たしている、とまぁこんなカンジかな。
で、噂話には幾つかパターンかあるんだけど、どの場合も主要な登場人物は三人、
小さな男の子二人と、主人公の高校生。この高校生が語る一人称形式で逝かせてもらいます。
では。

678 名前:名無しの多摩っ子 投稿日:2001/05/01(火) 07:03
ちょうど一週間前の土曜日のことなんだ。
親父が勤めている会社のバーベキュー・パーティがあって、あまり行きたくなかったんだけど、
ほら、この町に住んでるいじょう、やっぱり、パワー・プラントの世話になってるわけだし、
まぁ仕方なくってカンジで両親と一緒に行くことにしたんだ。
会場になったのは学校のすぐ南にある公園で、正午をちょっと回ったころに僕たち家族がつくと、
公園中にバーベキュー・ソースの甘ったるい香りが充満していて、寝坊して朝ご飯を食べてなかった僕は、
気乗りしてなかったことなんて忘れて、一番近くのコンロに駆け寄って、
紙製の皿を受け取るとすぐに焼きあがったリブを手にとって食べ始めた。
親父は真っ白なテーブルの上に置かれたシックス・パックのバドワイザーを一缶引き抜いて、
それを飲みながら、職場の同僚となにやらセスナの免許云々って話をはじめていた。
母親はというと、家から持ってきた手作りのクッキーをパラソルつきにテーブルの上において、
他の主婦たちに混じりながら、肉を焼いたり飲み物をクーラーボックスから取り出したり、と世話を焼くほうに回っていた。

679 名前:名無しの多摩っ子 投稿日:2001/05/01(火) 07:06
満足するまで食べ終えた僕は、ちょろちょろそこらへんを歩き回ったんだけど、
信じられないことに友達は誰一人いなくて、それどころか自分と同じ年頃のやつもいない。
親父はまだ仲間と夢中になって話をしているし、母親も忙しそうにしている、
なんだか急につまらなくなった僕は、
誰も見ていないのを確認してからこっそりとビールを一缶だけ抜き取って、
人だかりから少し離れたところで、芝生に腰を下ろしてそれを飲み始めることにした。
飲みなれないもんだから、ちびちびとゆっくり時間をかけて飲んでいく。
どれくらいの時間がたったのか、気づくとビールは全部飲み終えて、
いいカンジに酔いが回っていた。
人だかりから聞こえてくる喧騒もなんだかものすごく遠くからのように感じる。
そんな雰囲気の中、ぼーっと空を見上げながらかすかに吹く風を身体に感じていると、
いきなりトントンと僕のひざを誰かが叩いて「ねぇ、ねぇ」と声をかけてきた。

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