洒落怖
ミミズと僕

この怖い話は約 4 分で読めます。

部屋で話しているとき(僕がほとんど一方的に話してた)、
なかなかでてこないガチャガチャの話をしていると珍しくミミズが顔を
あげて話し始めた。
「僕の兄ちゃん・・それもってんだ」
「え!兄ちゃんも集めてるんだ!」
「うん・・今は受験のために集めるのやめてるけど・・かざってある、2個」
「!!」
興奮した僕は早速催促を始めた。「2個あるなら1個もらってこいよ!」
いつにもまして困惑したミミズだったが、僕は無理やりまるめこねて
彼を説得し、「じゃあ聞いてみる」といわせることに成功した。

800 797 sage 2008/08/23(土) 13:28:30 ID:m5Sp02uX0
次の日、見事にミミズは幻のガチャガチャをゲットしてきた。乱舞してる僕を
見てミミズも満足してるようだったが、急にまた目をギョロッとさせて
「実は・・兄ちゃん昨日友達の家に泊まって帰ってこなくて・・
勝手に持ち出したから・・その・・」自分でも何をいっていいかわからないよう
だったし、僕もそっか正式に持ち出したわけじゃないのか・・と少し後ろめたさ
を感じたが、すべてはミミズとミミズ兄の間のことであって僕には関係ない
として、ただただガチャガチャをゲットしたことを喜ぶことにした。

1週間かしたか、ある日のこと。すごく暑い日だった。セミがうるさく鳴き始め
僕もイライラしていた。僕はセミの鳴き声は正直好きじゃなかったし、その後の
人生でも好きになることはなかった。忘れられない1日の始まり。

801 797 sage 2008/08/23(土) 13:30:16 ID:m5Sp02uX0
教室に入って席にドスンと座ると、ミミズが自分の席から立ち上がり、珍しく
僕のほうに自ら近づいてきた。「おはよ・・」言いかけたときにミミズの顔が
蒼白になのに気がついた。「○○くん・・あのさ・・兄ちゃんが気づいてさ・・」
「2個あるなら1個くらいくれてもいいじゃん・・っていっといてよ」
いつにもなく強気で無礼な僕。どうしてもそのガチャガチャを手放したくなかった。
「いや・・それが・・1個しかなくなっちゃって・・その。。」
「え?1個?2個あったんじゃないの?」
ごにょごにょ言うミミズからの説明をなんとか僕は理解した。
この間ミミズ兄がいない間にガラスケースからとったガチャガチャは僕用の
1個ではなく2個だった。ミミズもそのガチャガチャの中身をよくみたかったらしい。
しかしミミズはそれをなくしてしまった。なくしたのはなんとも早い次の日の
ことだった。ミミズ兄はしばらく気づいていなかったが昨日ついに気づいて
しまったらしくカンカンだという。なくしたことは告げてないものの、とりあえず
1個返せば機嫌を直してくれるはずだとのこと。

ただガチャガチャを返せばいい・・なのに・・僕はどうしてもどうしてもそれを
手放したくなかった。もとはといえばミミズ兄のものであるにもかかわらず。
僕は意味不明な理屈を重ねて断固拒否の姿勢をとった。ミミズはもう泣いてる。
ギョロ目が潤んでひどく気の毒な顔になっていたのに・・
「僕はお前にもらったんだぞ!お前の兄貴にもらったわけじゃないし!
なんでお前の兄貴に返さなきゃいえないんだよ!」
「おねがいだよぉ~・・兄ちゃんイライラしてて・・すごく怒られる・・」
「しらねーよ!あー・・だったらだせばいいじゃんガチャガチャいって」
「むりだよぉ・・そんなことわかってるくせに!」
キッとミミズが僕の顔をにらみつけた。(初めてミミズのこんな顔を見た・・
ミミズのくせになんなんだよ・・)僕は顔をそむけて知らないふりをした。
しばらくミミズは僕の隣でたっていたようだが、先生が入ってきて目線を
戻すとミミズは窓際に席に戻っていっていた。
「・・しらねーよ・・ほんと・・」
あの、ミミズが僕を睨みつけた目が・・それが僕が見たミミズの
最後の目、そして顔。

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