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624 8/10 sage 2009/07/25(土) 18:08:11 ID:P1SawmcOO
辺りが少し暗くなりかけていたが昼間よりも信号待ちをしている人達は更に増え、それでも例の場所に同じように赤シャツのそいつは居た。
恐さとか不可解さとかを超越して俺はその時怒りに満ちていたので、こっちから詰め寄ってそいつに向かって大声で怒鳴っていた。
途中、そいつの隣に居た三人組のホストだか客引きだかが、自分達に絡んで来たと思い込まれ胸ぐらを掴まれたりしたが、そいつらにも赤シャツの異様な姿が見えたのか、誰も居ない空間に構わず怒鳴っている俺を気味悪がったのか(多分、後者)、気が付くと居なくなっていた。
その間も赤シャツのそいつは無表情でただ前だけを向いていただけだったが、俺が少し正気を取り戻し、そう言えば昼間手を合わせた時の事を頭の中で思い返してちょっと心苦しく感じた瞬間、目の前からそいつはスーゥと消えた。
そして、また、非通知から着信が入った。
「・・・・・・・・」
無言だった。
言いたい事は全て出尽くした感があり、俺も何を言えば分からず無言でいた。
626 9/10 sage 2009/07/25(土) 18:12:12 ID:P1SawmcOO
うまく説明出来ないが、なんと言うか別れ話を電話でしているような気まずい雰囲気と言うか、お互いがお互いの次の言葉を待ってると言うか…。
相手から嫌な雰囲気が感じられなかったからそう思ったのかも知れないが…。
俺は一人で勝手に分かってくれたんだな、って解釈して思わず「ごめんな」って口に出してしまった。
そのまま電話は切れた。
後日、彼女の病院にお見舞いに行った。
思っていたよりも彼女は元気で、後頭部を十数針縫ったものの、後は軽い打撲程度で済んだ。
ホーム下に転落こそしたが電車の到着まではまだ時間があり、駅員が緊急連絡をして最悪の難は免れた。
その後、ホームに居合わせた人達に引き上げられ、病院に運ばれたらしい。
複数の目撃者の証言から、彼女が一人でふらふらとホームから落ちる姿が目撃されており、彼女も模試の追い込みで連日徹夜続きだったらしく、落ちた瞬間の事は詳しくは憶えてないそうだ。
それよりも、ホームから心配そうに声を掛けている人達の狼狽した姿を下から見上げて見ているアングルが新鮮だったとか、彼女は嬉々としながら記憶の断片を思い返すように俺に熱く語っていた。
627 ラスト/10 sage 2009/07/25(土) 18:14:14 ID:P1SawmcOO
「なんにしろ無事で良かったよ。」
「てゆーか、あたし自殺とか勘違いされちゃってんじゃないかと思うと超~ハズいんだけど(笑)」
「…ところでさ、あと他に何か気付いたとか、変なところとかなかった?」
「ん~特にない(笑)」
俺は彼女に特に心配を掛けたくなかったから、あの出来事については一切話さなかった。
出来れば、俺一人の思い過ごしか妄想で処理したかった…いや、あくまでそう自分に言い聞かせたかったからだ。