洒落怖
よくないもの

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「○△や!」
誰かがそう叫ぶと、あっという間に家は大狂乱。訪問客は履物もそのままに逃げ出してしまったらしい。

506 502 sage 2009/07/10(金) 19:12:59 ID:h1B9YgXf0
その日の夜、祖父母と母親、お師匠さんが真っ青な顔で相談していたところに、
すこしはなれた村にいた住職が呼び出されて来た。
そのときは、Aの家(家っつーかお屋敷級でしたが)を松明をもった住民が取り囲んで、
それこそ今にも焼き討ちをせんばかりだったそうな。

恐ろしいことに、どうやら祖父母と母親はAを…Aの命を奪う方法について話をしていたらしい。
それをお師匠さんが絶対にさせん!と頑として折れなかったという。

「やってみよしな。」(やるだけやってみようよ、みたいな意味らしい)
そう言ってお師匠さんはAを預かってお寺で育て始めたそうだ。
詳しい話は聞きそびれたんだけど、3つか4つのお寺で持ち回りみたいな感じで
預けられては次に、っていう仕組みだったらしい。

何年かはそう大きなことは起きなかったらしく、Aが12歳くらいまではお寺にずっといたそうなんだけど、
もう結構なお歳だったお師匠さんは、亡くなってしまったんだそうだ。

お師匠さんのおかげでなんとかやっていたお寺の協力も、いなくなったとたんに
お互い厄介ものの押し付け合いでどうにもならなくなってしまったらしく、
かといって住職もどうしようもなく、結局親元に帰すことになったという。

そのときはえらく無責任だった、と詫びてくれたそうだけど、
同時に、自分ではどうもできんかった、とも言っていたそうだ。

508 502 sage 2009/07/10(金) 19:15:29 ID:h1B9YgXf0
・○△とかっていうのは、この地方に伝わる「よくないもの」の呼び名らしくて、定まった名前があるわけじゃないんだけど、
「そういうもの」に対してつかうものらしい。
 ○△は口に出してはいけない。(Aは「アレ」とか「そういうの」とかで表現してた)憑かれるらしい。

住職に事情を聞いて、Aはいくらか混乱しながらも落ち着いたらしく
「なんで20歳になったらここに連れて来いなわけ?」
と、質問をしてみた。

すると、それは亡くなったお師匠さんの遺言だったらしい。もし20歳までAが○△でなかったら、もう大丈夫だ、と。
(その判断はどうやるのかは分からないけど)
その代わり、○△だったら、石で頭を割って命を奪え、とも遺していたんだそうだ。
それほど恐ろしいものだったらしい。

住職は、そこまで話してからAにニッコリと微笑むと、
「もう大丈夫やし」
と、言ったという。

509 502=桑原和男 sage 2009/07/10(金) 19:16:45 ID:h1B9YgXf0
自分とAは村に着くと、実家ではなく、まずお寺に向かった。
ハッキリいってボロいお寺だったけど、なぜか塀に沿って石の玉がゴロゴロ並んでる。
それも1個2個じゃなくて、何十個っていう数。なのに、どれも砕けてたり、真っ二つだったり。

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