洒落怖
よくないもの

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「ちょっと!」
と、声を荒げたところ、いきなり

「ぎゃぁあああ~~!!助けて~~~~!!!○△やぁ~~~!!おとうさ~~~ん!!!」
と、ものすごい声で叫び出したという。

504 502 sage 2009/07/10(金) 19:09:58 ID:h1B9YgXf0
すると、店の奥から木の棒(枝じゃなくて棍棒みたいな奴だったらしい)を手にした
白髪のおっさんが飛び出してきた。それも、威嚇とかじゃなくて思いっきり振り下ろしてくる。

「○△!いねや!きなや!」
とかそんな感じの方言で、Aを追い払う…というか、それこそ命も狙わんばかりだったそうで、
騒ぎを聞きつけた周囲の住人も、遠巻きにAを囲もうとしていたらしい。

あとはもう必死で山道を駆け上り、「なんで?」「なんかしたんか俺?」と自問を
繰り返しながら家に逃げ込んだそうだ。

「母さん!なんなんここ!マジヤバイって!マジで!」

と、来客中にもかかわらず母親に詰め寄ったA。
ところが、Aのお母さんは何も言わずに下を向いてしまったらしい。

「おー。大きなったなあ、お寺さんおぼえとるか?」
と、母親の向かいに座っていた住職が声をかけてきた。

たぶん自分が小さい頃に挨拶した人なんだろうな、と、記憶にないので
ああ、はい、とかそんな返事をして、Aは改めて母親に今あったことを説明し出した。

すると、住職は
「覚えとらんか。覚えとらんのか。そうか…。覚えとらんそうや、どうするや。」
と、Aの母親に尋ねた。

母親は困りきった表情で返事が出来なかったそうだ。
少しの間、沈黙があったあと、住職が口を開いて言った。
「わしが(話を)しよし。」

505 502 sage 2009/07/10(金) 19:11:29 ID:h1B9YgXf0
話はさかのぼって、Aが生まれてすぐの頃。
母親の産後の休養もかねて実家でのんびりしつつ、Aを自然の中で育てたいという
両親の希望で、Aと母親は村に戻ってきたという。父親は単身赴任。

その周辺ではいいとこの家だったそうで、毎日ひっきりなしにAを見に来る人で
ちっとものんびりできなかったとか。それでも、Aの母方の祖父母は娘自慢に孫自慢で
近隣にふれて回るような喜びようだったそうな。

そうしたある日、高名なお坊さん(前述の住職のお師匠さんです。便宜上お師匠さんとします)
が、Aの祖父母と付き合いがあったので孫の顔を拝みに来たという。

母親が、Aをだっこしたままお師匠さんに顔を見せてやろうとしたとき。

「○△××□○□!」
と、誰かがお師匠さんを口汚く罵ったんだそうだ。
Aの母親はまさか両腕の中にいる赤ちゃんが言ったとは思わなかったんだろう。
なおも罵声は止まない。

とたんにお師匠さんが仁王様のような形相に変わっていき、
この辺で罵声の主が赤ちゃんだと周囲の人も気がついたという。
Aの母親は事態が飲み込めず凍りついたように立ち尽くし、お師匠さんはダラダラと
滝のような汗を流していたそうだ。

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