この怖い話は約 3 分で読めます。
この穴はサイクリングコースからは見えない死角の部分になっており、
崖に登って頂上付近から見なければ見えない場所に位置するので、
子供にしか見つけることが出来ないような場所だったと思う。
俺達はこれまで何度かこの場所に遊びに来ていたのだが、
そのような穴があることには全く気が付いていなかったので、
新しい冒険の予感にワクワクしながら、さっそく見に行くことにした。
横穴のある壁の手前には崖がかなり切り立った部分があって、
足を滑らせて落ちたら確実に大怪我、
下手をすると死ぬかもしれないような危険な場所がある。
その切り立った崖の下はちょっとした林のようになっているため、
その木が死角となってサイクリングコースからは穴が見えないのだ。
普通の子供ならその部分に差し掛かった段階で行くのをためらうのだが、
当時の俺らは怖いもの知らずの「やんちゃ」なグループだった。
613 ゆうちゃん&トミー(4/7) sage 2009/05/30(土) 03:29:23 ID:NUzskH9Q0
危険な場所を慎重に進みながら、なんとか穴にたどり着く。
中を覗くと5m程度先まではなんとか見えるのだが、
それより奥は完全な闇になっており、
懐中電灯がなければどうなっているのかがわからない。
その穴の奥を見ようとして代わる代わる首を突っ込んでいた俺達だったが、
ゆうちゃんとトミーが中を覗き込んだ瞬間、
二人ともそれぞれ異なる反応を示しながら、
みるみる顔が青ざめていった。
二人は口々に「ここの穴はスゲー嫌な感じがする。
絶対に入らないほうがいい。」と主張し始めた。
特にトミーの狼狽ぶりは酷く、穴を覗きこんだ瞬間、
目を見開き、雷に打たれたようにのけぞったかと思うと、
反射的に穴から遠ざかる様子を見せた。
まるで何かの発作でも起こったのかというようなものすごい反応だったので、
見ていた俺達のほうがびっくりしてしまったほどだった。
ガタガタ震えながら一刻も早くここから逃げ出したいと訴えている。
二人に詳しい理由を聞いたのだが、
ゆうちゃんにははっきりとした理由がわからないようだった。
614 ゆうちゃん&トミー(5/7) sage 2009/05/30(土) 03:32:06 ID:NUzskH9Q0
しかし、トミーは今まで見たことが無いものが見えたというだけで、
見えたものについてはガンとして話そうとはせず、
早くこの場を離れたいと訴え続けて冷や汗をかき始めた。
それまで俺らはその穴に入る気満々だったのだが、
この二人が口を揃えて警告したので、一気に冒険心が冷めてしまい、
それどころかこの場所にいることが恐ろしくなってきて、
来た道を慎重に戻り、その日はそのまま帰ることにした。
その後もトミーは何を見たのか全く話してはくれなかった。
その翌週、俺達の見に行った例の穴で凄惨な事故が発生した。
俺達のように例の穴を見つけた同年代の子供達数人が、
その穴に入ったのだが、その直後に崖崩れが起こり、
例の穴が完全に潰れてしまったというのだ。