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その時一緒に遊んでいた子供のうち、
被害に遭わなかった者が慌てて大人を呼びに行ったが、
穴のある場所がとても悪い場所にあり、救出は困難を極めたらしい。
結局その穴に入り込んでいた3人の子供が帰らぬ人となった。
その事件の話題で地元が大騒ぎになると、俺達は互いの幸運を実感し、
ゆうちゃんやトミーのお陰で難を逃れられたことに心底感謝した。
615 ゆうちゃん&トミー(6/7) sage 2009/05/30(土) 03:32:51 ID:NUzskH9Q0
しかし、そうなれば益々トミーが何を見たのかが気になってしまう。
しつこく食い下がる俺達の要求に折れたトミーは、
諦めたような表情を見せてから渋々と語り始めた。
トミーが例の穴を覗きこんだ時、
その穴は少なくとも10m程度先までは見えたらしい。
日の光が届くのはせいぜい5m程度だったのだが、
彼には霊的な力のお陰で、それよりも先の暗闇が見えたらしいのだ。
日の光が届かない暗闇のすぐ先には、
青白い無数の腕が中から這い出して来ようと必死にもがいており、
さらにその奥には広大な空間があって一度引き込まれたら、
決して戻って来られないような印象の恐ろしい闇が広がっていたという。
物理的なその穴は、おそらく日の光が届かない5mよりももう少し深いだけで、
実際には10mも深さはないと思うとも話していたが、
あの穴に入れば確実に引き込まれるということだけはわかったというのだ。
そして、這い出て来ようとする無数の腕よりも、
その先に広がる広大で身の毛のよだつ様な暗闇のほうが圧倒的に恐ろしく、
あの穴を覗き込めるほど近付くまで、その存在にすら気がつかなかったことにも、
心底恐怖を感じたらしい。
616 ゆうちゃん&トミー(7/7) sage 2009/05/30(土) 03:33:32 ID:NUzskH9Q0
後になってわかったことなのだが、
その崖は以前から何度となく崖崩れを起こしていたようだ。
数十年に一度の割合で忘れられたころに同様の事故が起こり、
その都度子供が巻き込まれて亡くなっているらしい。
毎回その横穴は崖崩れによって完全に潰されているにもかかわらず、
いつの間にかポッカリと口を開いており、
それを見つけた不運な子供が吸い込まれるように入り込んで、
生き埋めになっているというのだ。
川の横にある崖の奥の横穴には決して近付かないほうが良いと思う。
その穴の先には多くの苦しみから抜け出そうとし、
また、そこへ仲間を引き込もうとする何者かが、
手ぐすねを引いて待っているのかもしれない。