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【 アリ と キリギリス 】
アリさんたちは、春も夏も秋もずっと一生懸命働いていました。
キリギリスさんはその間、ずっと遊んでいました。
冬になりました。
食料無くなったキリギリスさんは、とってもおなかが空いてしまいました。
オマケに寒波襲来で寒くて寒くて。
キリギリスさんは、何か分けてもらおうとアリさんたちの家に行きました。
コンコンコン、とドア(童話なのでアリの巣にもドアがあるのだ)を叩くキリギリス。
外はもう吹雪です。凍えてしまいそうな寒さです。おなかもぺこぺこで目眩がします。
がちゃ、とドアが開きました。
「やあ、キリギリスさん、どうしたんだい?」
アリさんたちは笑顔です。
「あの、ボクはおなかぺこぺこなんです。何か分けてくれませんか?」
キリギリスさんは、ひもじそうな声で言いました。
それを聞いたアリさんたちは、とっても困った顔をしました。
だって食料はアリさんたちだけの分が精一杯。
一年中働いてもせいぜいそれだけ溜め込むのがやっとなのです。
税金や年金、保険料その他でいっぱい吸い上げられてしまうのですが、それはまた別のお話し。
「いや、キリギリスさん。ボクたちもやっとなんだ。君に分けてあげる余裕はないんだよ」
アリさんは口調な丁寧であったが、はっきりとキリギリスさんの申し出を拒絶しました。(続く)
112 本当にあった怖い名無し 2010/08/12(木) 04:45:24 ID:0YiqO46+0
(続き)
「そこを何とか! このままじゃボクは死んでしまう!」
キリギリスさんは血走った目で、必死にくいつきます。
「でもねキリギリスさん、君はボクたちが一生懸命働いている間、遊んでたじゃないか。ちゃんと働けばよかったんだよ」
そう言ってドアを閉めようとします。
「待ってください! お願いします! お礼はしますから何か恵んでください!」
キリギリスさんはドアに縋りつき、必死に懇願します。
困ったアリさんたちは顔を見合わせました。
そしてなにやらゴニョゴニョと話し合いをしました。
数分経って、アリさんたちはキリギリスさんに向き直りました。
みんな満面の笑顔です。
「わかったよキリギリスさん。とりあえず中にお入り」
そう言ってアリさんたちは、寒さに震えるキリギリスさんを巣穴に迎え入れました…。
…その日の夜。
アリさんたちの晩餐のテーブルに並んだのは、あのキリギリスさんでした。
キリギリスさんの羽や足、あの美しい歌声を出す喉も丁寧に調理され、
アリさんたちはそれらを心ゆくまで味わいましたとさ。
めでたしめでたし。 (おしまい)