洒落怖
守るため

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驚いた。だってしっかり姿見えていたし、私は会話までしている。

「嘘でしょ?」

私は半笑いで訊いた。しかしEちゃんは真顔だった。

「嘘だと思うなら階段下りていってみなよ。もう姿消えてるはずだから」

半信半疑で階段を下りるも、すでにおばあさんの姿はなかった。
1階まで下りて探してみたけど、どこにもいない。

その階段というのが螺旋階段に近い作りになっていて、確か階段を使うためには、
1階、5階、7階から入るしかないはずだった。
5階から1階までの間に建物の中に入ることもできない作り。
そして私達が座っていたのが、5階辺り。
そこから1階まで、足をひきずっていたおばあさんが短時間で下りられるわけないの
だった。

631 本当にあった怖い名無し 2011/10/06(木) 13:29:19.21 ID:GNkVFYKo0
Eちゃんのもとへ戻ると、彼女はやっぱりねという顔をしてポッキーを食べていた。

「たぶん大丈夫だよ。人が多いから気になって出てきただけみたいだから。害の
ない霊だよ」

「じゃあなんでEちゃんはおばあさんと話さなかったの?」

「あたしに能力があると知ったら、害のない霊でも憑いて来ちゃうことあるから」

「私、普通におばあさんと会話しちゃってたんだけど…」

「平気平気」

632 本当にあった怖い名無し 2011/10/06(木) 13:30:02.65 ID:GNkVFYKo0
これが私が初めて霊を見た瞬間だった。
霊ってもっと怖くて、怨念深い感じで出てくるとものだと思っていたから、なんだか
拍子抜けした。
すごくナチュラルに出てくるものなんだ…。

「亡くなって霊の姿になっても足をひきずってるなんて、可哀想だね」

「いやいや実際あたしが普段見てる奴らはあんなもんじゃないから。もっとぐろいよ」

あんな優しそうなおばあさんの霊を見ただけでも、やっぱりちょっと怖いなと思って
いた自分が恥ずかしくなった。
そして改めて、Eちゃんが置かれている環境の特殊性を知った。

634 本当にあった怖い名無し 2011/10/06(木) 14:01:14.50 ID:GNkVFYKo0
その後の私は霊を見ることなく、無事に高校を卒業した。
卒業後、Eちゃんは事務職に就き、私は実家に住みながらフリーターをしていた。
お互い仕事とアルバイトに追われ、Eちゃんとはあまり会えなくなった。
しかし、たまにメールや電話でやりとりは続いていた。

Eちゃんが仕事を辞め、夜の仕事を始めたと聞いたのは、高校を卒業してから1年程
経った頃だった。
夜の仕事を始めたきっかけは、父親のリストラだったそうだ。
さらにEちゃんの家には早くに結婚して出戻って来た妹さんと、Eちゃん似でイケメン
なのに、なぜかひきこもりの弟さんがいた。
Eちゃんは家族を支えるため、必死に働いていた。
なんだか実家に寄生してふらふらアルバイトをしている自分が恥ずかしくなった。

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