洒落怖
武器

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だから先生は言ったんだ。
術者はいざという時のために、強力な武器を持つ必要がある。
けれども同時に、武器を持つ行為自体が非常に危険であるのを自覚せねばならない、と。
例えば、そんな武器を所持して外出する場合、行き先に注意する必要がある。
特に心霊スポットなんかは行かない方が良いね、と。
そんな強力な武器を見せびらかして歩いたら、霊に喧嘩を売るような物だから。
その地に棲む霊達に対する挑発に他ならないんだと、先生は言っていた。
所持者本人にその気は無くても、と。
霊が霊を呼び、強大な力になって、自分に向かってくる場合だって有りうるから。

そして、絶対にしてはいけないのが、荒神を祭る場所への所持。
例を挙げると、日本なら平将門公を祭る場所へ持ち込んだら、大変な目に遭う、と。
その所持行為は、宣戦布告とみなされてもおかしくない。
しかも神様というのは、傍に多くの者達が控えているからね。
平将門公ならば、多くの兵の霊を引き従えているだろう。
しかも一人一人が、長い間に力を蓄えた一騎当千の強者だと。
術者が個人で使役する式神とは、比べ物にならない程の力を蓄えている、と。
そんな荒神に仕える多くの霊達が、無礼者に対して一斉に攻撃を仕掛けてくる。
そうなったら、どうにもならないね、と。

828 3/3 sage 2011/05/24(火) 21:29:51.83 ID:hmhcUm6a0
だから強力な武器というのは、同時に非常に危険なんだよ、と先生は教えてくれた。
時には所持しているだけが、とても怖いくらいにね、と。

しかし面白いのが、強い武器であれば強い武器であるほど、使う頻度は下がるという事実。
道士の方々も、前述した以上に強力な武器を、数多く所持している。
けれども、そんな武器を本気で使用する機会など、滅多に無いね。
一生使うことも無いまま、終わってしまうのが殆どじゃないだろうか。
日本の警察官と一緒だよ、と先生は説明した。
勤務中に備品の拳銃を発砲せず、定年退職する人達が殆どじゃないかな。
酔っ払いや喧嘩を止める場合に、警棒を使う程度じゃないかな、と。

そして先生は、もしかして何か呪術的な武器が欲しいの?と聞いてきた。
俺が、うん、欲しいと素直に答えると、先生は男の子らしいね、と笑った。
じゃあ、だからこそしっかり勉強しなくてはいけないよ、と。
武器を使うには、冥律という基礎をしっかり身に着けねばならない。
これは様々な術式と同じなんだ。
人間社会だって武器の扱いを取り締まる、銃刀法があるよね。
同じように、冥律を犯さないよう、武器の携帯に注意せねばならない、と。

しかしね、仮にそんなものを持ったとしても、あまり変わらないよ、と言った。
先生自身が若い頃、強い武器を初めて手に入れた時は、とても心躍ったそうだ。
これで自分も術者の仲間入りだ、とね。
たとえどんな敵が現れても、今の自分なら負けることは無い、とか。
しかし、しばらく所持して分かったんだが、使う機会なんて無いんだね。
先生自身、別に敵対する術者がいるわけでも無いし。
強力な敵に出会う機会があるわけでも無いし。
現に入手してから、今まで殆ど使ったこと無いんだよね、と。

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