洒落怖
選ばれた施設

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「この辺から始めましょ」と記録係が私の手を引っ張り、ボウルに触れさせる。
硬く細いものが手に当たった。一番始めに見た、細切りのワカメのようなものだと分かった。
それを口まで運ばれる。抵抗しても無駄と分かっていたので私は口を付けた。
隣で家族が、「ひっ、ひいぃ~ん」というぐしゃぐしゃの泣き方をしていた。
もう一人(とても我慢強く、芯がしっかりしている)も
「お願いだから勘弁してえ…、勘弁してええ……」と凄く悲痛な声で泣いていた。
私は抵抗をしたところで無駄、それどころか殴られるということを知っていた。
だから恐ろしくとも抵抗を見せず、そのワカメを食べた。
しかしこれはどの部位なのだろうと思うと恐ろしく、ほんの少ししか食べられなかった。
それも一噛み、二噛み、三噛みが精一杯。捨てる場所もないので私はすぐに吐き出した。
「どうだった?」
記録係のおばちゃんが聞いてくる。どうやらほんの一口でもいいらしい。
「どの部位かと思うと怖くて食べられません…。薄味でした」
「ふんふん。じゃあ次、こっちね」
サラサラと書いておばちゃんが、次のものを食べさせる。
私はまた少しだけ食べて吐き出した。
必死だった。ひい~ん、ひい~んと泣く家族のことなど気にしていられなかった。

385 5/5 sage New! 2010/09/01(水) 11:13:09 ID:xN+Ow1Qj0
最後の三つは舌だった。一つめはカリカリに揚げた、スナック菓子的なもの。
二つめと三つめは生ハムのようなものと、舌そのままなんじゃないか?というようなものだった。
しかし舌だと思うと恐ろしくて飲み込めない。
噛むたびに吐きそうな気持ちの悪さに襲われた。
舌を食べるあの感触…。何とも言えない。
少しは食べなくてはと思い噛みきろうとしたが、力を入れても切れなかった。
なので諦めて、はむはむと噛むだけにした。というよりも『しゃぶる』かもしれない。
始めは味がしたけども次第にぬるぬるとするだけになって…。私は吐き出した。
「どうだった?おいしかったでしょ!」
「とても噛み切れませんよ。食べられる人いるんですか?あれ」
「あははっ、今度聞いてみるわ」
これで最後だと思ったからか、ちょっとした雑談をする余裕すらできていた。
家族もほぼ同時に食べ終わったらしく、係の者に
「以上で終わりです。お疲れさまでした」と言われ、
「うっ…うっうっ、うあぁ~ん」と大声で泣いている。

おばちゃんが私の最後の感想を記録する。これでやっと帰れる…。そう思った。
すると誰かが近づいてくる気配がして、おばちゃんと何事か話し始めた。
しばらくヒソヒソと何か言ったあと、「ん、分かった」とおばちゃん。
そしておばちゃんは言ったのだった。
「あなた、冷静に食べてたわね~。ここに来るときも落ち着いてたんだって?
だから、このままAクラス、いってみよっか!」

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