洒落怖
つかれてる

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とても長くなります。

受験勉強もやって、かろうじて名門大学に滑り込みました。
人並みに頑張ったと思ってます。そして人並みに成果が出たかな。
会社勤めがはじまってからも、やっぱり頑張りました。
でも、ちょっと頑張りすぎちゃったのかもしれない。

営業入社だったんですよ。
どこの会社でもそうですよね。
伸び悩んだが最後。他の課への転属が待ってる。
人当たりが良くて、礼儀正しい。
それだけで配置されたなんてド新人にはきつい職場でした。
同期に後二人入ったんですね。

彼らは半年もしないうちに最初の成績あげたんです。
数年に一度しか営業課には残れないっていわれるくらいだから。
もう、その時点で、自分は脱落だと覚悟してました。
でも、はじめったんです。
納得ができないほど、挫折感を味わったのは、あれが最初でした。
なんとかしなきゃって走り回って。
やっとのことで、親族の経営する会社に売り込みました。
数字でいえば他二人より桁が一つ上です。嬉しかったなあ。
「はやいとこお前の机は他所にいってもらおうな」
顔を合わせるたびにいわれていたこのお小言がなくなりました。
見放されかけていた先輩に、ばんっばん肩を叩かれながら
「よしっ、くどきにいくぞっ!」
って発破かけられる毎日がはじまりました。
一人いなくなり、二人いなくなり。
数年ぶりに自分が営業課に正式採用がきまりました。

834 本当にあった怖い名無し sage 2010/06/08(火) 19:04:44 ID:m+mNMB9G0
二年くらい働いて、先輩の営業が一人転属になり。
わたしは無理を続けながら、段々、頭がハゲてきました。
ある日、ふと鏡の中の自分が、変に見えたんです。
こびへつらうような薄ら笑いを浮かべてることに気付きました。
口の周りにも作り笑いをうかべていたせいか、皺がよってます。
成績と引き換えに悪くなった人相を見て悲しくなりました。
それからだんだんと食事が喉を通らなくなってきました。
自分のやっていることは正しいことなんだろうか。
クレームがつくたびに、怖くなっていって。
成績が落ちてきて、上司にも随分迷惑をかけました。
入社した手の頃は厳しかったですが
期待に応え続けてきた信頼からか。
「調子崩してるときはぱーっと遊べ。
 おまえのこれまでの売り上げなら
 二ヶ月でも三ヶ月でもいい。
 でもそのあとはしっかり仕事しろ」
ありがたいお言葉をいただけました。

でも出かける気にもならなかったので、ずっと家にいました。
その女性に出会ったのは、心配した先輩が、家に訪ねてきたときでした。
直前まで飲んでいた先輩が、友達のホステスを連れてきてくれたんです。
「酌でもしてもらったら気がまぎれるんじゃないか」
大学時代の同級生を前にわたしは呆然としました。
あちらも気付いたようで、気まずそうにしてました。
「こいつが俺の言ってた我が社のホープだよ
 いまのうちにご機嫌うかがっといたらきっと将来大金おとすぞ」
そんな囃し言葉にのせられながら、久しぶりに酒を飲みました。
先輩が先に潰れてしまった後は、杯を空けては注いでもらいました。
二人とも無言でした。
でも帰り際に言われたんです。
「つかれてる」
かわしたのはこの一言でした。

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