洒落怖
夏の思い出

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「このエビ美味しい!」
「焼肉も外で食べると格別だね!」

楽しい時間は過ぎ、日は完全に落ちて真っ暗な中にバーベキューの火だ
けがゆらゆらと灯してる、ゆったりとした時間が過ぎていきました。

ふっとトイレ-といってもその辺でするしか無いのですが、立ち上がろ
うとした時でした。点在してる海の家らしい廃屋に灯りが点っているの
が見えたのです。

ただ、廃屋っぽくは見えますが、実際は漁師が倉庫に使っていたりなど
人の出入りがある建物がある事も知っており、普段は特に不思議には思
う事でもないのですが、ちょっと様子が違いました。

76 夏の思い出 [5] sage 2011/12/17(土) 21:20:48.56 ID:DzskEHgt0
その廃屋には大きめの窓が有り、数人の人間の顔が1本のロウソクを囲
んでいるのが遠目にも解りました。不思議な事にその顔の表情も見て取
れるくらいはっきりとしていたのです。

一瞬ゾクっとはしましたが、あまりに鮮明に見えるので「町の若い衆が
肝試しに百物語でもやってるのかな」などと思いました。

-せっかくの楽しい時間だし、気にしないでおこう-

ちょっと離れた場所で用を足し、みんなの所に戻りました。

「よし、花火やろっか」
「やったー!」
「花火花火!」

大量に買った花火をどんどん消化し、わいわいと楽しんでる皆を横目
に、どうしてもさっきの廃屋が気になりチラ見をすると、まださっき
の状態のまま、ロウソクを囲んでる幾人かの頭が見えました。

77 夏の思い出 [6] sage 2011/12/17(土) 21:21:08.70 ID:DzskEHgt0
20m以上は離れていたと思うのですが、何故か私にはその表情や目
の向きなどがはっきりと見て取れていました。運転手の私はもしもの
時の為にお酒は飲んでおらず、そういった意味での勘違いでも有りま
せん。とにかく、はっきりと見えたのです。

-ニヤっと笑いながら手招きをしてる男性の顔を-

「これはヤバイな・・・」そう思った瞬間でした。
夕立にも似た激しい雨が振ってきたのです。
みんなテントに逃げ込み、各々タオルを出して頭や身体を拭きました。

「うわー濡れちゃったね」
「うん、でもこれはこれで旅の思い出だよ!」
「うんうん!だよね!」

私は先ほどの廃屋の件がどうしても気にかかり、雨だし帰ろうと促しま
したが、大丈夫大丈夫と寝袋の準備をしだす皆。私も諦めて寝袋に入り、
いつしか眠りにつきました。

78 夏の思い出 [7] sage 2011/12/17(土) 21:21:29.58 ID:DzskEHgt0
翌朝の早くに目が覚めた私は、まだ寝息を立てている皆を置いてテン
トから抜け出し、昨日の廃屋を確認する事にしました。外はもう明る
いので恐怖などは無かったのですが、近づくにつれ息が重くなるのを
感じました。

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夏の思い出