洒落怖
ターザンごっこ

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気がつくと私は、大きな声でわあわあ泣きながら、おばあちゃんにもらった狐のぬいぐるみを抱きしめていました。
場所は奇妙な部屋ではなく、ましてや幼稚園ではなく、自宅の父と母の寝室でした。

906 本当にあった怖い名無し New! 2012/01/23(月) 22:01:06.09 ID:SHL8GCgj0
けれど私は景色がいきなり変わったことに驚くことなく、わあわあ泣き続けています。
私の泣き声を聞きつけた母が「どうしたの?」といって寝室のドアを開けました。
私は母にしがみついて「こんちゃん(狐のぬいぐるみ)のね、おなかがね、破れちゃった!」というようなことを
しゃっくり交じりに言ったとおもいます。
そして、その自分で言った言葉に、自分でびっくりしました。
私は今まで変な部屋にいて、狐のぬいぐるみのおなかがどうこうなんて、いま自分が言った言葉で知ったのです。
というか、朝は確かに破れてなんてなかったはず。
びっくりした拍子に涙も引っ込んで、私はびっくりしたまま、ぬいぐるみを確認しました。
確かにぬいぐるみのおなかが縦に大きく裂けて、中の白い綿がふわふわと出てきています。
私は目の前のその惨状に、とてもすごく悲しくなって、俄然わあわあと泣き始めました。
私は何故か、そのとき「狐のぬいぐるみが死んでしまった」とおもっていました。
壊れた、ではなく、死んだ、と。

907 本当にあった怖い名無し New! 2012/01/23(月) 22:03:28.98 ID:SHL8GCgj0
すると、私がなかなか泣き止まないことを不審におもったのか、
遊びに来ていたらしいおばあちゃんがひょこっと顔をだしたので私はしがみ付いていた
母から離れて、おばあちゃんに泣きつきました。

「おばあちゃんごめんなさい、こんちゃん死んじゃった」
「あれ、何をいうンだいね、この子」

おばあちゃんは私の頭をぽんぽんとたたいてあやしながら「かしてみい」と私につぶやきました。
私は素直に死んでしまったぬいぐるみをおばあちゃんにあずけました。
するとおばあちゃんはしげしげとその裂け口を見てから、ほんわり笑いました。

「Mちゃん、死んでないよ。怪我しただけさね。ばあちゃんがつくろったるから、ちょっとまってな」

おばあちゃんはそういって、母から裁縫セットを借り受け、ぬいぐるみのおなかを元通りに縫い合わせてくれました。

数年後、私が小学校4年生のときにおばあちゃんは亡くなりました。末期癌でした。
不思議と涙が出ないまま、私は何とはなしに昔話のつもりで一連の事件のことを母にいうと、
母はとても奇妙な顔になりました。

908 本当にあった怖い名無し New! 2012/01/23(月) 22:05:45.32 ID:SHL8GCgj0
「確かにMはターザンしてて落っこちだけど、あんた別に気なんて失ってなかったでしょ。
びっくりするぐらいケロリとしてたじゃない」

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