洒落怖

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「お父さん、あの石あったよ!」
嬉々として見せるけれど、お父さんの表情は不審そうなまま。
おかしいな、と思いながらも私は車に乗り込んだ。

873 3 sage 2010/01/27(水) 16:48:00 ID:sarATqMa0
車内で話すのは、お父さんの夢の話を聞き、あそこに石を置いたときのこと。
お父さんとお母さんは二人して驚いている。
お父さんは確かに石の夢を見たらしい。
けれど、お母さんにその話をしたのは今日だし、
そもそも、夢を見たのだって昨日だと言う。
つまり、私に夢の話をした覚えはないし、
何より枝の間に石を置いたなんてことはない、と言うのだ。

あれ、と思い返してみる。
確かにお父さんは置いた。
けど、いつだった?
最近っていつだ?
置いた後、どうした?
思い出せないことがちらほら出てくるのに時間はかからなかった。

けれど、何が何でも私はこれを正当な記憶にしたかった。
そうでないなら、この石はなぜあんなところにあったのかわからない。
嘘だ、と言い張る私を尻目に、お父さんもお母さんも嘘じゃない、と言う。
「でも、石持ってきちゃったよ」
嬉々とした私はあのまま石を握ってきたのだった。
観音様じゃないにしろ、お父さんの夢に出てきた石と似ていると言っていた。
それに、あの雨の中落ちなかった石だから、何かあるんじゃないか、と思っていた。
お母さんはあからさまに嫌そうな顔をして、何かあったらどうするの、と言った。
私だってそう思う。
その日から少しの間、私は石を見るたび不安になったが、
結局、何も起こらないままだった。

今も、ただ石はここにあるだけだ。

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