洒落怖
ぐるぐる巻きの鐘

この怖い話は約 3 分で読めます。

あたり一面山だらけ。
どこを見渡しても山ばかりという地方の出身です。

小さい頃からお世話になっていたお寺に「鐘」がありました。
「鐘」と書いたのには理由がありまして、
それは布と縄でぐるぐる巻きにされていたからです。
鐘を撞く丸太もついていません。

なのである程度の年頃になってアニメの一休さんなどを見るようになり
寺の隅の屋根つきの一角にあるべきものは鐘なんだな、ということが
わかるようになりますと、そのぐるぐる巻きの中身は
鐘なんだろう、と感じるようになるというくらいで誰も中身を
見たことはありませんでした。

58 2/11 2009/10/14(水) 00:14:56 ID:RQVGJyVv0
小学生くらいの時には両親に「なんでぐるぐる巻きなのー」と
聞いた記憶はあるのですが、両親も由来など詳しいことを知らず、
自分たちが両親が子供のころからぐるぐる巻きであり
「ぐるぐる巻きの鐘」と呼んでいたとのことです。
当然中身も見たことがないということです。

すっかり時が経ち、私は大学進学のため実家を離れます。
夏休みに帰省をすると、田舎と言えど自分の家の周りにも
多少は開発の手が伸びていました。

昔自分の部屋であった場所、今は物置となりつつあるのですが
窓際から景色を見てみると昔とは眺めが変わっており、
自分の部屋から「鐘」のお寺を見ることができました。
お寺は山の上のほうにあるのですが、自分の部屋からは
裏の里山が邪魔をしていて昔は見えなかったことを思い出しました。
そうか、虫を取ったりアケビを食べたりしたあの山も
無くなってしまったかと寂しがりつつ、窓から寺を見ていました。

59 3/11 2009/10/14(水) 00:16:34 ID:RQVGJyVv0
寺は遠いので自分の家からだと親指の爪程度の大きさに見えます。
夕飯時に「裏山がなくなって寺が見えるようになったんだね」
という話をしました。すると両親からは
自分が大学に入った直後くらいに無人化してしまい、法事と祭りの時だけ
別の大きなお寺から僧侶を呼んでいると教えられました。

ある夜のことです。一人暮らしに慣れてしまったせいか、
自分の部屋だというのに枕が合わないような気がして
なかなか寝付けない日がありました。そのとき

「ぐうん」

と低い低い音が聞こえました。鐘の音?と思い窓の外に目をやります。
満月に近い月の出ている夜でしたが遠く離れた寺の鐘の様子など
肉眼では見えません。10秒ほど見つめていると、ほんの一瞬だけ
人工的な光がチラッと目に入りました。気になって小学校のときから
使っていた勉強机の引き出しを開けます。母親が捨てていなければ、と
そこにあるはずの双眼鏡を探します。

60 4/11 2009/10/14(水) 00:17:58 ID:RQVGJyVv0
双眼鏡は昔のまま、そこにありました。ほこりがついた
レンズを覗き込むと、倍率は低いのですが暗がりの中にぼんやりと
動く人のようなものが見えました。3名ほどの人間が鐘撞き小屋のところで
何かしているようです。懐中電灯を持っているようですが、
覆いをしているのか、時折周囲を照らすだけで様子がはっきりとは見えません。

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