短くて怖い話
誰もいない

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昔ドイツなど、中欧文学に詳しい先生の研究室に行った時のことだ。一枚の写真を見せられた。質素な教会で、静かにミサをしている写真。純朴そうな村人が数人写っていた。何もおかしなところのない写真。だが何かが?「先生、この写真は?」緊張に耐えられずに聞いた
先生は、静かに答えた。「この教会は、誰もいなかった時に撮ったんだよ。」先生は、ドラキュラや狼男などの怪奇譚を集めておられた。実は、少し前だが、私の似た経験を話したことが有った。子供の頃、北陸のある町の寺に祖父、父、兄と私で行った行ったことがあった。

住職の読経と厳かな雰囲気に子供心に息も詰まる思いだった。十分程した時、後ろに何者かの気配を感じた。振り返ると時代劇に出る様な姿の人が数人居るのがわかった。何度か見たが、静かに経を捧げているように見えた。本堂の中が明るくなった時、もう誰もいなかった。
帰り際、父が「下のが」住職が祖父に「あなたもこれで」みたいな話をしていた。祖父の家に数日滞在し、家の菩提寺は 昔柴田勝家の敗残の将士を弔った寺であると聞かされた。先日の体験を話すと、祖父は頷いた。父は何も話さなかった。

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