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「よぉ。もうすぐ着くから」
電話越しでBが言いました。しっかりした、張りのある声でした。
「良かった。やはり泊まるよう言って正解だった」
到着が随分早い気がしましたが、その時はあまり気になりませんでした。
十分ほど経つと、チャイムが鳴りました。「来たな」と思い、玄関へ行きます。
そして、ドアを開けようとしたとき、フト覗き穴から外を見てみたくなりました。もちろん、見なくてもBだと分かっていました。
そっと覗いてみると、おかしい。誰もいません。
僕は思わずニヤっとしてしまいました。実は、本来Bの性格は、こいうものなんです。仲のいい者には、お茶目な一面を見せてくれます。
「やはり誘って良かった。機嫌が良さそうだ」改めてそう思いながらドアをあけます。きっと、開いたドアと壁の隙間に隠れるに違いありません。
40度ほど開け、ヒョイと顔を出し、ドアの向こう側を確認しました。しかし、誰もいません。
もっと辺りをよく確認しようと、さらにドアを開けながら、一歩、足を外に踏み出したときです。
ドアが急に閉まりました。
ものすごい勢いです。ドアノブから手が離れます。まだ半分しか身体を出していません。叩きつけられるような形で挟まれてしまいました。
ドアの固いかどが胸に食い込みます。背中にも衝撃が走りました。
それだけではありません。ドアはただ閉まったのではなく、まるで誰かに押さえられているようでした。
しかし、いくらあたりを見回しても、ドアを押している人はどこにもいません。
手で押し返しましたが、びくともしませんでした。ドアの力は増していきます。
625 : 本当にあった怖い名無し : 2012/07/05(木) 00:11:53.44 ID:/fwAWn+v0
わけが分からず、挟まれたまま、何も出来ない状態でした。どんどん胸に食い込んできます。
「誰か助けて!」
そう大声を出そうとしました。そのときです、恐ろしいものを見てしまったのは。
もがく僕の足元を、女の顔が、スゥーと部屋に入っていったんです。それは女の頭部だけで首から下は埋まっているように見えました。
顔は無表情なのですが、右目と左目を交互に、上下に動かしていました。そして、長い黒髪をズルズルと引きずっていました。
それを見た瞬間、ドアの力が緩まり、僕は開放されました。
バランスを崩します。踏ん張って立て直したとき、またドアが閉まりました。
「うわぁ!」
僕はとっさに内側にかわしました。閉まった時、「バァン!」という大きな音が響きました。指を挟まれたら千切れていたと思います。
いっきに冷や汗が吹き出てきました。息も荒くなってます。挟まれた胸はズキズキと痛んでいます。
そして、さっき見た女の顔を思い出し、背中に悪寒が走りました。
「あの顔、僕の部屋に入って行ったよな……」
Bの話が頭をよぎりました。霊に悩まされている――。もしかして、今のも霊? 霊が僕の部屋に来たのか?
でもBはどこに? もうすぐ着くと電話があったのに。いったい、今、どうなってるんだ?
疑問が頭の中を駆け巡りました。