洒落怖
朝顔の話

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631 朝顔の話1 sage 2009/07/11(土) 19:22:16 ID:7VcXytZk0
俺が小学4年生くらいまでのころは、夏休みになると朝顔を育てるのが慣例だった。
といっても花の生態を知るとかいう高尚な理由ではなく、毎年親父が朝顔の種を
買ってきていたので、観察日記をつけるのが自由研究には一番手軽な方法だったからだ。

けれども俺は4年生のときにその観察日記をやめてしまうんだが、その時の話。

うちにあった庭は、母屋で凹型に囲われた中庭のような感じだった。
まあ日当たりは悪くなかったんだけど、結構な本数の樹木と古い家特有のどことなく陰鬱な
雰囲気が嫌いで、俺はあまり一人で庭に出たりはしなかった。

中庭の隅のほうには、でかい石造りの露天風呂のようなものがあった。
「ようなもの」と書いたのは、それがとても風呂としての用途をなすようには見えなかったからだ。
形はほぼ直方体で(バスタブを想像して貰えれば判り易い)、広さは3メートル×6メートル、深さは
2,3メートルはあったんじゃないかと思う。そいつが棺桶のような感じで地面に埋まっていた。

その「風呂」はもうだいぶ使われた形跡が無く苔むしていて、
子供が誤って落ちたら危ないということで上には金網が張ってあった。
蛇口みたいなもんは周りには無かったし、何より奇妙だったのは
その「風呂」の底はコンクリでもなんでもなくただの「地面」だったことだ。

632 朝顔の話2 sage 2009/07/11(土) 19:30:41 ID:7VcXytZk0
俺にはとても風呂には見えなかったし、生け簀としてもおかしな造りだと感じていた。
ただ、当時の俺にはそれ以上のことは判らなかったし、興味も無かったから特に気にしなかった。

その年の夏休みも半ば、俺はそろそろ観察日記に飽きてきて内容も適当になっていた。
朝顔の写生はおろか、植木鉢の中の雑草とりすらやらない。
そういうことには結構厳しかったうちの親父は「一度決めたことは最後までやり遂げろ、
せめて雑草取りくらいはやれ。」と俺を叱責した。

まあ、面倒だというほかにも理由はあった。
俺は朝寝坊をしない性質だったので正直早起きして観察くらいは特に苦では無かった。
けど、みんなが寝ている中一人で庭に出て朝顔をみるなんて事は、怖くてやりたくなかった。
こんなことを親父に話しても納得されるはずも無く、笑い飛ばされて逆にからかわれた。
それで俺も多少頭にきたので、次の日の朝は張り切って庭に出て日記をつけていた。

それでも、朝だろうが、昼だろうが、俺はこの庭の陰気な感じがどうしても好きになれなかった。
母屋の縁の下から「お化け」が出てきて背後から襲われるかもしれない、なんて内心ビビリながら日記をつけていた。

633 朝顔の話3 sage 2009/07/11(土) 19:35:49 ID:7VcXytZk0
ふと、妙なことに気付いた。

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